『スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー』45点(100点満点中)
インチキなプラモのようなメカが飛び回る
レトロなムードたっぷりのSFアドベンチャー映画。
舞台は1939年のニューヨーク。著名な科学者が連続で失踪した事件を追う女性記者(グウィネス・パルトロー)の前に巨大ロボの大群が現れる。彼女は、街に襲い掛かるロボの前で間一髪のところを、元恋人で空軍の凄腕パイロット、スカイキャプテン(ジュード・ロウ)に救われる。
この映画の監督は、本作がはじめての脚本、はじめての監督だ。なんでも自宅のガレージにPCをでんと据え、4年もかけてこの映画の原案となるCG映像を作ったという。たった6分間のその映像を彼がハリウッドに持ち込んだところ、一流のスターが何人も出演する大作として見事映画化されることになった。PC一台でコツコツ作った映像でハリウッドに監督デビューできるとは、何ともすごい時代である。
『スカイキャプテン』は、面白いことに全編ブルースクリーン撮影、つまり役者以外は背景すべてがCGという特殊な映画だ。そういえば日本でもあの『キャシャーン』が同じ事をやっていた。『スカイキャプテン』も、どの場面も白いもやがかかったような、もしくはソフトフォーカスとでもいうような個性的な画面作りをされている。
『スカイキャプテン』の世界は、エンパイアステートビルのてっぺんに飛行船の停泊所があったり、空中空母が登場したり、空&海両用戦闘機が出てきたり、ビルの間をそれがえらい小回りで飛び回ったりと、子供の頭の中にある架空世界をそのまま映像にしたようなほほえましいもの。
そこに、宮崎アニメファンならおなじみのあの手の長い飛行ロボ(テレビ版『ルパン三世』155話に出てくるラムダや、『天空の城ラピュタ』にも登場する)が襲い掛かってくる(どちらもデザインの元ネタが同じ)。この先行者みたいなへっぽこなロボを見ているだけでも笑える。これら映像にはリアリティが薄い分ツッコミどころが多く楽しい。また、純粋に童心に戻ってワクワクできる楽しみもあるだろう。
主演二人のキャラクターはやや平凡。ヒロインは、相変わらずぱっとしないグウィネス・パルトローよりは、独眼のアンジェリーナ・ジョリー(『トゥームレイダー』シリーズほか)の存在感が大きい。なにより今回は、そのルックス自体が最高のギャグだ。よくマジメに演技できるなあと感心しきり。
『スカイキャプテン』は、これだけ夢のある世界を作りだしてくれただけでも見る価値があると思わせる映画だ。ストーリーがイマイチなのと、キャラクターが平凡ということで、映画としては一歩も二歩も足りないが、昔路地裏の模型店に並んでいたインチキなSFメカを眺めるのが好きだった下町SF少年にとっては、なかなか見所の多い映画ではなかろうか。