『砂と霧の家』75点(100点満点中)

的確な描写とスリリングなストーリーで見ごたえ十分

一軒の家を巡る争いと人間模様を描いた同名小説の映画化。演技派の役者をそろえ、見ごたえのある人間ドラマを展開する。

夫と別れたショックで茫然自失の日々を送る主人公(ジェニファー・コネリー)は、亡き父が残した海辺の美しい家で一人暮らしている。ところがわずか数百ドルの税金を滞納したため、当局に家を差し押さえられてしまう。弁護士に相談した結果、行政の手違いが判明したものの、そのときすでに家は競売にかけられており、イランからの移民一家に買われてしまっていた。

家の新所有者となった家族の長たる男(ベン・キングズレー)は、イランで軍の高官をつとめていたためプライドが高い。彼は家族とともに亡命してきたのだが、米国では最底辺の肉体労働者として屈辱の日々を送っていた。だから全財産をはたいて買ったこの家は、故郷と同等の暮らしに戻る最大のチャンスであり、よってそれにかける執着もハンパではない。

それに対する元所有者のヒロインの方は、この家がなくなればホームレスになるしかない上、この家自体が愛する父が人生をかけて遺してくれた遺産だ。思い出だって染み付いている。引く道理がない。激しい対立の始まりである。

この対立軸に深くかかわってくる重要人物である地元の警官を含め、登場人物すべての描写が非常に的確でわかりやすく、ドラマにのめりこむことができる。対立するそれぞれの立場と言い分に理があるため、いったいどう解決すべきなのか観客も彼らと共に悩み抜くことになるだろう。

決してハッピーな物語ではないが、深い感動を与えてくれるストーリーだ。この物語では家ではなく、家庭の大切さが描かれ、本当に大切なものが何なのかを我々に教えてくれる。セリフも良いし、「タイタニック」を手がけたジェームズ・ホーナーによる音楽も良い。彼は本作でもアカデミー賞作曲賞にノミネートされている。

主演のジェニファー・コネリーは相変わらずいい演技を見せてくれるし、おまけにハリウッドきっての見事な裸体もみせてくれる。

まあ、そんな不謹慎な見所はともかく、『砂と霧の家』はとても見やすいエキサイティングな人間ドラマだから、興味がある方は劇場に出向いて間違いないと思う。



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