『沈黙の聖戦』55点(100点満点中)

セガール、容赦せん!

『少林サッカー』『HERO』『LOVERS』のアクション監督が、人気アクションスター、スティーブン・セガールを主演にメガホンを取ったアクション映画。

タイでバカンス中の少女二人が誘拐された。一人はアメリカ上院議員の娘、そしてもう一人は主人公の元CIA局員ジェイク(S・セガール)の愛娘だった。仲間の釈放を要求する犯行グループに対し、ジェイクはCIA組織を頼らず、自らの手で娘を奪還することを決意する。

セガール主演映画なので、過去の出演作とは何の関連もないにもかかわらず、自動的にタイトルが『沈黙の〜』になっている。まあ、内容がいつもどおりの「無敵セガールの独壇場」的映画なのだからある意味仕方がない。こうなったら、意地でも最後まで沈黙シリーズとして続けていただきたい。

さて、そんないつもの「無敵セガールアクション」映画の本作であるが、特筆すべきは監督がアクションに定評のある人だという点だ。『少林サッカー』『HERO』『LOVERS』のアクションを担当したという実績を見ればそれは明らかだが、『沈黙の聖戦』のよいところは、彼が自分の得意な事だけをやり、余計なものに手を出さなかったというところだ。

セガール映画はここのところ、じりじりと製作費を削られており、本作も米国の映画にしてはややチープな出来であることは否めない。が、この監督はその予算をいくつかある銃撃戦、そしてセガールを中心とした格闘アクションの出来をよくするために重点的につぎこんだ。その結果、本作はセガール映画のなかでも、格闘アクションに関しては相当見ごたえのある作品に仕上がっている。1日で書いたような単純なストーリーに、適度にお色気とロマンス(濡れ場も有り?!)、そしてアクションをぶっこんだという内容だが、それなりに見られるのだから大したもの。

今回セガールと共に戦う元僧侶を演じるバイロン・マンという人は、最新作『キャットウーマン』でヒロインのハル・ベリーの恋人役としてなかなかの存在感を見せており、ブレイクを予感させる。アジア系の顔を持つ役者としてはかなりハンサムで、本作でも美味しい役柄をこなしている。

タイが舞台ということで、セガール好みのアジアンテイストがあふれた一品。格闘アクションが好きな方には、とりあえずおすすめしておこう。



連絡は前田有一(webmaster@maeda-y.com 映画批評家)まで
©2003 by Yuichi Maeda. All rights reserved.