『くりいむレモン』7点(100点満点中)
『くりいむレモン』なのに男の尻しか見れないとは……
80年代に話題になった同名のアダルトアニメシリーズを実写映画化したもの。血のつながっていない兄妹の恋愛を描くエッチなドラマ。
17歳の亜美には、2歳離れた(血のつながっていない)兄がいる。ある日、両親が海外出張にでかけてしまい、二人きりで家に残されてしまう。やがて亜美は風邪で寝込んでしまい、お兄ちゃんに看病されるのだが……。
『くりいむレモン』は、80年代に思春期を迎えたオジサンたちなら思わずピクっと反応してしまう単語である。アダルトアニメビデオの黎明期に大きな人気を博したシリーズで、やがてここから派生したアニメ『レモンエンジェル』は地上波テレビの深夜枠にも進出し、一部のマニアの支持を得た。その時の主要キャスト(かつバーチャルアイドルグループ)の一人桜井智が、その後、声優櫻井智として大ブレイクを果たした事も有名だ。
当時、オリジナルの『くりいむレモン』を見た男の子たちは、アニメなのにモザイクがかかったハードなHシーンに驚いたものだ。コミケでトップクラスの売上を誇る某大手サークルのCGデザイナー氏による、「複雑なトコは描くのが面倒だからモザイクなんだよ」という、妙に説得力がある言葉を思い出す一瞬である。
そのオリジナルは確か女学園が舞台のエロい話だったが、おかげで私がのちに東京・白金の聖心女子学院の歴史ある素晴らしい校舎に入る機会があったとき、最初に思い出したのがこのエロアニメだったというアホな記憶がある。
まあ、そんな懐かしい思い出を思い出しながら映画『くりいむレモン』を鑑賞したが、これはどうにも食えない一本であった。
オリジナルのアニメで「血のつながっていない妹」キャラとして人気があった亜美の名をもつヒロインを演じる女優は、確かにそれなりにかわいらしい。ささやくように「おにいちゃん……」と呼びかける姿は、この道のマニアも及第点をあげる事であろう。まあ、演技は誰も彼も下手っぴだが、そんなのは元からどうでもいい話。問題は、この作品に誰もが期待する「エロ」の要素があまりに弱い点にある。
風呂上りの兄が半裸で妹の前に出てきてみたり、風邪の妹を看病したり、お兄ちゃんの部屋に突然妹が現れて「ここで勉強してもいい?」なんて聞いてみたりと、ストーリーなどそっちのけで「妹萌え」(←流行中らしい)のシーンを垂れ流す前半の構成は悪くない。
だが、最後の一線を越えるあたりに「溜め」が無く、盛り上がりに欠ける。おまけに肝心の場面が真っ暗で尻のひとつも見せないというのでは『くりいむレモン』の名前が泣く。この映画版では、何といっても美少女の裸が一つも出てこないのだ。出てくるのは「お兄ちゃん」の方のお尻だけ。これでは金返せといわれても仕方が無い。
また、たったの78分だというのにこのなんともチンタラした展開はどうにかならないものか。ワンショットが無駄に長く、間延びしている。監督には独自の美意識というものがあるのであろうが、世の中にはTPOという言葉がある。『くりいむレモン』なんぞで中途半端に芸術的な事をやってどうするのだ。まったく、場違いもはなはだしい。モンタージュに凝る暇があったら主演女優を脱がすくらいのサービスがあってもいいものだ。
『くりいむレモン』はレイトショーであるから、酒を飲んだ後にカップルで見れる要素が何か一つくらいはほしい。しかし、始まって5分くらいで先が読めてしまうストーリーだから他の要素でがんばるしかないのにそれがない。これでは旧アニメ版のファンも、気軽に入ったカップルも、首をかしげてしまうに違いない。