『SURVIVE STYLE 5+ サバイヴスタイル5+』40点(100点満点中)

けれん味だけでは満足度は低い

国際的に高い評価を得ているCMプランナー多田琢&ディレクター関口現のコンビが、広告業界の人脈を駆使して手がけた斬新なコメディ作品。浅野忠信、小泉今日子、千葉真一といった豪華キャストも話題だ。

何度殺しても死なない妻を持つ男の話、術をかけられたまま催眠術師が死んでしまった男の話、その催眠術師の愛人であるCMプランナーの話、彼女に殺しを依頼される外人の殺し屋とその通訳の話、そして空き巣で暮らす奇妙な3人組の話。この5つのストーリーが同時進行する。

CM監督出身らしい斬新なビジュアル、独特の色彩感覚、そして作品にマッチした音楽はさすが。役者もそれに合わせて突き抜けた演技を見せる。とくに「何度殺しても死なない妻編」で妻を演じる橋本麗香や、「術をかけたまま死ぬ催眠術師編」の阿部寛のインパクトはかなりのもの。これはなかなか見ごたえがあった。

しかし、こうした強い個性に驚くのも最初のうちだけ。5つのシーンを交互に見せるために気づきにくいが、ストーリーの進行がとにかく遅い。スピーディさに欠けている。5つの物語が徐々にかかわり合う展開も結末も平凡だ。

内容や演出はナンセンスの極みといったもので悪くはないが、それだけじゃ見る側は徐々に疲れてくる。これでは有名なCMカントクがとびきりのセットをそろえ、有名役者を使って遊んだだけといった印象だ。せっかくの個性も「奇をてらっただけ」と思われては、お客さんの印象に残ることはない。その武器を使って人々をどう楽しませるか、そこをもっと煮詰めてほしい。



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