『キング・アーサー』45点(100点満点中)

スター不在で地味な上、感情移入すべきキャラクターの描写が不足

ハリウッド一のブロックバスター映画(超大作娯楽作)仕掛け人、ジェリー・ブラッカイマー製作の歴史大作。『ロード・オブ・ザ・リング』をはじめとした、あらゆるファンタジー作品の元祖ともいえるヨーロッパのアーサー王伝説の映画化だ。

5世紀初頭、ローマ帝国の支配下にあるブリテンでは、魔術師マーリン率いるウォード、残虐な侵略者のサクソン人が3つ巴の戦いを続けている。やがてローマ軍はこの地域からの撤退を決定するが、残されたあるVIP一家を救うため、ローマ軍最強の騎士団である円卓の騎士とそのリーダーであるアーサーを呼び出す。長き傭兵期間の終了と引き換えに言い渡されたこの危険な任務を、アーサーは苦渋の思いで引き受けるのだが……。

アーサー王伝説といえば、魔法と剣と英雄たちの群像劇といったイメージがあるが、関連する史跡も多く、欧米では現実の歴史としての研究もさかんな物語だ。この映画版『キング・アーサー』も、魔法などファンタジーの要素を排除し、現実の歴史の登場人物としてのアーサー王を描いている。

この映画版には、有名なエピソードであるヒロインのグウィネヴィア(のちにアーサーの王妃となる)と円卓の騎士最強の男ランスロットの不倫や、円卓の騎士による聖杯の探索、媚薬に運命を変えられた悲恋物語であるトリスタンとイゾルテの物語などは登場しない。その他のいくつかのエピソードやイメージを寄せ合ったオリジナルストーリーとなっている。原作のファンは、その辺の大幅な変更についてはあきらめた上で見に行くしかない。

かといって、この題材に詳しくない一般向けの内容かというと案外そうでもない。特に前半の約1時間は、この物語の背景や時代設定についてある程度の予備知識がないと、ついていくのも大変だろう。円卓の騎士たちの役名についても、元々知っている人はいいが、そうでない多くのお客さんは、誰が誰やらわからないような状況に陥る可能性も高い。このあたりは少々説明不足で不親切といえるだろう。この映画に関しては、パンフレットなどを事前に読むことをおすすめする。

元々『キング・アーサー』は舞台がヨーロッパということで、演じる俳優もイギリスの俳優を中心とした地味な面々だ。そのため、この手の娯楽大作としてはスター不在で、キャストの知名度が全体的に今一つであるという点が大きなハンデとなっている。剣の戦いが見せ場となる歴史大作といえば、公開中の『トロイ』があるが、ブラッド・ピットという金看板を抱えるあちらに比べると、『キングアーサー』はどうしても縮小再生産といった印象になってしまうのが残念なところだ。

そんな中でも、唯一の救いはヒロイン役のキーラ・ナイトレイの存在。最近では、メインキャストとして出演した『パイレーツ・オブ・カリビアン』が日本でも大ヒットした彼女。『キング・アーサー』ではアーサーの王妃となる若きグウィネヴィアを演じているが、弓矢で敵をなぎ倒して行く後半は、まるで彼女の主演映画かと思うほどの大活躍。小さ目のムネをさらにぎゅっとしめつける刺激的な衣装で、男性ファンを楽しませてくれる。

円卓の騎士の面々やマーリンが、ほとんどその他大勢レベルにしか描かれていない点や、エクスカリバーについてもほとんど言及なしといった点は、アーサー王伝説を少しでも知る者にとってはさびしい限り。スター不在による地味さも否めない。期待の映画化作品ではあったが、結果としては消化不良の印象が残った。



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