『69 sixty nine』40点(100点満点中)

俳優たちの魅力はタップリ味わえる

村上龍による同名の自伝的小説を、人気の宮藤官九郎脚本で映画化。妻夫木聡、安藤政信、金井勇太、加瀬亮といった人気キャストも話題。

舞台は全共闘の嵐吹き荒れる1969年、長崎・佐世保のある高校。主人公はちょいと不純な男子高校生。学校のアイドル的存在の女の子と仲良くなるため、彼女を主演に映画を撮ろうと決意するが、ひょんな事から話はエスカレート。悪友仲間を巻き込んで、学校をバリケード封鎖することになってしまう。

主要キャストの一部を見ると、年齢的に高校生役は無理では……? などという疑問も浮かぶが、そんなものはハンサムなお顔の魅力で吹き飛ばす。シモネタも連発、勢い良く突っ走るハチャメチャな展開の青春映画だ。

アポロは月面に着陸、デモに明け暮れる学生は機動隊と対決し、パンタロンやらヒッピーが流行した。そんな時代の雰囲気を前面に出してそのまま見所にしている映画なので、舞台となった1969年ごろに青春時代を過ごした人が見れば懐かしいものがあるはず。

それ以外には、メインキャストのイケメン俳優のファンの女子らが主だった観客となろう。クドカン脚本らしく、キャラクターの個性が際立っているので、彼らの演技を主目的に楽しむというやり方も大いにありえる。

いくつかのエピソードを順々にくっつけたような構成で、はなからストーリーを楽しむような作品ではない。時代性を強く出し、ぶっ飛んだキャラクターの魅力と下ネタ等で強引に笑わす青春なつかし系コメディだ。小難しいテーマがあるわけではないので、お気楽に笑って楽しむべき娯楽映画といえる。

逆にいえば、左翼華やかりしこの時代、およびキャストに興味のない人々には、取り立ててすすめる点はない。クドカン脚本が苦手な人にもすすめない。ある程度限られた客層にのみウケるであろう作品なので、どうしても見たい人だけ見れば良いだろう。



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