『アップルシード』70点(100点満点中)

オリジナリティ溢れる映像に、日本アニメの未来の姿が見える

斬新な見た目と迫力あるアクションが特徴の、SF長編アニメーション。原作は今でもファンの間で高い人気を持つ。

『アップルシード』は、従来のアニメーション映画とは大きく異なるルックスを持つ作品だ。この独特の映像は、簡単に説明すると以下のように撮影された。まず、各キャラクターの動きを、体型が似通った人間の俳優が演じる。それをモーションキャプチャーで取りこみ、CGアニメ化する。そしてこうして作られた立体的なキャラクターを、伝統的なセルアニメ風に彩色するのである。背景やメカのみならず、キャラクターを含めたすべてにこの技術を適用した映画としては、『アップルシード』は世界初の作品となる。

完成したキャラクターたちは、動きは3D-CGアニメ独特の無段階で滑らかな動き(人間の動きをそのままトレースしているのだから当然だが)で、見た目は従来のセルアニメ調という、インパクトのあるものとなった。肌の質感等にも、旧来の3D-CGにありがちな無機的な冷たさはない。

最初は面食らうが、慣れてくるころにはこのアイデアの長所をひしひしと感じてくる。やはり長年親しんだセルアニメキャラの愛らしい外見というのは、3Dとなっても比較的違和感なく感情移入できる。さらに、こうしたSF作品の背景やメカ類に関しては、CGアニメにとってまさに独壇場。戦闘シーンの美しさ、迫力は見ごたえ十分だ。

ストーリーも、読みにくい人物の相関関係などを推理する楽しみがあるし、終盤には予期せぬ展開になったりなどなかなか面白い。ただ、訴えるテーマが少々子供っぽいため、普通の大人の方にはやはりすすめにくい。独特の設定や用語も、慣れないとわかりにくい。だからこの映画は、第一のお客さんである原作ファンを除けば、大人向きのアニメ作品にもともと抵抗のない人や、CGで描かれたメカやキャラのバトルシーンを純粋に楽しめる性格の人に向いている。

それにしても、この作品のスタッフの方たちは、実にいい仕事をした。『アップルシード』を見ていると、彼らの新しいものへの挑戦の意思が伝わってきてとても気持ちがよい。私は『アップルシード』に、日本のアニメーション作品が将来進むべき道のひとつを見た気がした。



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