『ケイナ』60点(100点満点中)

独特の雰囲気の中に、日本アニメとの共通点を感じる

フランスが作った、ヨーロッパ初のフル3D-CG製長編アニメーション作品。3D-CGアニメでもっとも有名なのは『ファインディング・ニモ』等で知られるピクサー社だが、当然ながら印象はまったく違う、個性的な作品である。

人間の動きには、当初やや不自然さを感じるだろう。ゆらゆらとゆったりめの動きは、骨がなさげな人体とでも言ったところだ。肌はのっぺりした質感で、CGであることを隠そうとはしていない。

しかし、その辺はすぐに慣れる。特に若い世代の日本人はアニメを見慣れており、キャラクターを一種の記号として認識する癖がちゃんとついているから、見た目の違和感はすぐに消えてなくなる。やがては、お尻の割れ目が半分見えているヒロインの服のデザインが、とてもセクシーに感じられてくるから不思議だ。

劇中では、この物語世界独特の用語が説明もなく使われ、シリアスなストーリーが展開する。となりの某映画業界関係者などは早々に寝ていたが、こうした大人向けアニメドラマに慣れていない人には、確かにとっつきにくいかもしれない。

私などは、”巨乳の美少女が世界の救世主”というモチーフは、オタク界では万国共通なのだろうかなどと、どうでも良いことを考えたりして、なかなか興味深いものがあった。ヒロインのグラマーな肉体と軽快な動き、そしてハリウッドの人気女優キルスティン・ダンストの可愛らしい声を十二分に楽しませていただいた。

フランスでは日本のテレビアニメの名作の数々が長いことTV放映されており、それを見て育った世代がこうした作品を続々と生み出している。そのためか、『ケイナ』にも日本のアニメと妙に似通った雰囲気を感じる。

今週は横綱級の『イノセンス』とかぶってしまい、明らかに分が悪いが、『ケイナ』は普段の週だったら、これを真っ先に推してもいいなと思わせるだけの魅力がある一本だ。一風変わったアニメ映画が見てみたいなという方がいたら、ぜひ試してみてほしいと思う。



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