『ハリウッド的殺人事件』50点(100点満点中)

アメリカ版・こんな刑事がいたら嫌だ

ベテラン刑事と若手のデコボココンビをコメディチックに描く、ハリソン・フォード主演のアクション映画。演出には元ロス市警の刑事がアドバイザーに付き、作品にリアリティを出している。

この映画の特徴は、刑事たちがみな副業を持っているという点にある。日本で副業を持つ警察官といえば「こち亀」の両さんくらいなものだが、そのアドバイザーによれば、アメリカの警察においては普通のことだという。そういえばプロボディビル史上最高のチャンピオンとして知られるロニー・コールマンも本業はアメリカの警官だったし、ボブ・サップを「イタイイタイ」と泣かせたおっかないミルコ・クロコップもクロアチアの警察の特殊部隊隊員であった。

『ハリウッド的殺人事件』に出てくる二人の刑事も、それぞれ不動産仲介業とヨガの先生という、およそ本業とかけ離れた副業を持っている。そして、シリアスな殺害現場での捜査中だろうが、命がけの銃撃戦の最中だろうが、マヌケな着メロが鳴り出すと、副業用の携帯を握ってペコペコお客に頭を下げ出すのだ。このギャップでお客を笑わせるというのが本作の基本パターンである。

今回起きる殺人事件は、ハリウッド的……と名がついているとおり、業界のドロドロした裏の部分が真相に関わっているのだが、その辺の謎解きはあまりメインではない。フルオープンのマスタングという、いかにも西海岸に似合う車種によるカーチェイスや、主演スター2人のとぼけたやりとりを笑って楽しむという、軽い映画なのだ。

ハリウッド周辺の風景や雰囲気も楽しめるので、そういったものが好きな方にはいいかもしれない。人生を変えるような一本を求めて映画館に行くような人には向かないが、お気楽な娯楽映画としては、平均的な仕上がりの一本といえるだろう。



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