『アイデン&ティティ』30点(100点満点中)
原作コミックを愛する人に
みうらじゅんの原作コミックを俳優の田口トモロヲが初監督した作品。脚本は、日本で一番忙しい売れっ子の宮藤官九郎(『木更津キャッツアイ』)が担当している。
イカ天という伝説的な番組が昔あったが、それを肌で知る世代のなかの、熱烈にはまった人たち向けという、かなり少数のターゲットに向けた特殊な映画だ。ロックを愛し、自らもバンドを組んだ経験くらいはあり、ボブ・ディランが好きで、なおかつ原作のコミックも読んだことがあるという人がいたら、楽しめるかもしれないといったところ。多数のカメオ出演者をはじめ、こうした客層ならばわかるであろう、小ネタも多数だ。
それ以外の人にはオススメのしようがない。クドカンは小劇団風の脚本を映画に持ち込んだことで評価される人だが、もう少し映画ジャンルの特性にチューニングするコツをつかめば、さらに支持者はふえるのではないか。今後に期待したい。