『デッド・ロック』20点(100点満点中)

悲しい時……パンチが当たってないのが見えてしまったとき

現役ボクシングヘビー級チャンピオンがレイプ犯罪を犯して刑務所に入れられ、そこの囚人ボクシング・最強チャンピオンと戦うという話。聞いた瞬間に、ダメ映画ファンたちの血がうずきそうなあらすじである。

実際、『デッド・ロック』のトホホ具合は相当なものである。ストーリー展開は予想通りの苦笑ものだし、唯一のウリであるボクシングシーンも実に安っぽい。

これを見ると、なぜボクシング映画があまり作られないか、その理由が良くわかる。リアリティあるファイトシーンを撮るのは非常に難しいのだ。格闘技経験のある本作のウェズリー・スナイプスがやってこれなんだから、普通の役者じゃ、もう、どうしようもないはずだ。この映画にしても、観客が最後のパンチをみて心で叫ぶ言葉はきっと、「当たってねえよ」の一言だろう。

特に『デッド・ロック』の場合、リアルなものを作ろうとしているのにしょぼいのだから痛い。原因の一つは現役ヘビー級チャンプ役の俳優で、図体ばかりでかい上に動きがのろい。あれではどう見てもチャンピオンにはなれそうも無い。

たとえファイトシーンがうそ臭くても、たとえば名作『ロッキー』には、人々を感動させるドラマがあった。こちらには、まさにその肝心のドラマ要素が薄い。さらにあのころに比べれば、観客の目も厳しくなっている。核となる物語が弱いから映画はあまり盛り上がることもなく、チープなボクシングのシーンがクライマックスにポツーンと配置されて寂しい限り。ダメ映画ファンは大喜び間違い無いだろうが、一般のお客さんはどうか。少々心配である。



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