『映画 犬夜叉 天下覇道の剣』60点(100点満点中)

ファンを楽しませるという一念で作られた楽しい作品

高橋留美子原作のTVアニメの映画版。継続中のストーリーを邪魔しない上で、ファンをたっぷり楽しませるという目的の元に作られた映画である。

というわけで、犬夜叉の赤ちゃん時代のカワイイ姿や、その出生の秘密、ライバルの兄、殺生丸との対決やちょびっと生まれる友情(兄弟愛?)らしきものなど、たくさんの「萌え」要素にあふれた内容となっている。

そもそもこの作品自体、非常に狙い済ましたキャラクター設定を感じることのできる漫画である。主人公からして、「美少年+犬」である。女性の好きなものを組み合わせれば、そりゃ魅力も2乗、3乗というものだろう。

全体の構図としては、クール系、熱血系と、正反対な兄弟。見た目はもちろん美少年。彼らの間には、ニュートラルな「被感情移入役」の女の子を語り部として配置する。主人公のつよ〜い男の子も、強力なアイテムを持つ彼女には逆らえない。美少年に囲まれた女王様気分にファンの女の子たちも浸れるというわけだ。

この映画も、ストーリーらしきものはあるが(なかなか面白いですぞ)、要するに一番見せたいのは、彼らシリーズキャラクターたちの意外な一面である。テレビではあまり見れないこうした要素を前面に押し出した劇場版というのも、一つの手としてはありだろう。

最後にあなたがもしこのシリーズのファンならば、エンドロール後の一幕まで、席を立たぬよう。



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