『1980』30点(100点満点中)
80年代が面白い時代だということはわかったが
タイトルどおり、1980年を舞台にしたドラマ。3姉妹を中心とした話が展開する。
30〜40歳くらいをターゲットにした映画といえる。80年代の時代考証をきっちりと行い、しつこいくらいそれを前面に押し出す演出だ。80年代独特の、表層的でどことなく能天気な香りのする小物たちが、画面の隅々に満ち溢れ、登場人物の台詞にも当時の流行語がぽんぽん飛び出す。
テクノバンドのアーティストであり、現在は舞台演劇の演出で大活躍する監督がチョイスした音楽も、あまりマニアックな方向に行き過ぎず、普通に80年代を生きてきた観客の胸に響くものとなっている。
あまり本筋とは関係がないばかげたエピソードがちょくちょくはさまれたり、ワンシーンごとにノリツッコミの笑いが入ったり、突然登場人物が踊り出すなどの演出はいかにも舞台演劇らしいものがある。
ただし舞台と違って、映画における役者と観客の距離は非常に遠い。役者のわずかな動きにもお客さんが注目してくれる、舞台演劇での間のとり方や演出は、映画でそのまま通じるものではない。『1980』は、舞台でやったならよかっただろうが、映画としては物語のフォーカスがはっきりせず、見ていてドラマがまったく面白くない。このへんは悪い意味で映画初監督作品らしいといった感じがする。
80年代が、じっくり見ると非常に興味深い時代であるということだけはわかったが、映画としてはそれ以上のものが欲しいところだ。