『黒の怨』60点(100点満点中)
暗いトコに入ると殺されます
「闇」を恐怖の題材にしたホラー映画。タイトルは、「また和風テイストの洋モノ恐怖映画?」と思わせるが、実際はそうではない。「恨み」がモンスター誕生の原因ではあるが、それは映画の冒頭でさらっと触れるだけ。何の伏線にもなっていない。『黒の怨』は、伝統的な化け物からのサバイバルホラーである。
ルールはただひとつ、「光の中は安全」。日が落ちてくるとトゥースフェアリーなる化け物がやってきて、主人公たちを襲う。彼らには、何か襲われる理由があったようだが忘れた。たぶん、見ているお客さんも誰も覚えていないだろう。
まずは、天井のダウンライトが壊れ、非常灯も徐々に光量が減って行く。懐中電灯の電池は弱り、最後はポキっと折ってボヤ〜ンと光るスティックライトだけとなる。画面から明るい部分が少なくなるたびに、お客さんの恐怖度がアップするというわけだ。ルールが単純なだけに迷いがなく、スッキリとしていてわかりやすい。「とにかく、俺たちの作ったびっくり箱を楽しんで帰ってくれよ」という、コンセプトの明確な作品である。全編70分(エンドロール除く)を、すべてビックリシーンに使っている。
暗くなって、画面からの情報が少なくなるにつれて、音演出の重要性が増すが、『黒の怨』はその先もサウンドでビックリさせようとしているので、こちらは気が抜けない。
映画の後半では、ヒロインが何の意味もなく唐突に上着を脱ぎすて、胸の谷間を露出して逃げまわるという、監督の男気あふれる演出もあり、好感が持てる。
これぞデートにぴったりのお化け屋敷的ホラー映画。後味もスッキリだ。ぜひともお試しあれ。