『ファインディング・ニモ』90点(100点満点中)

2004年お正月シーズン最大のオススメ

全米アニメ映画史上最大のヒットとなり、今年の夏シーズン最大の話題作となったアニメーション映画。人間にさらわれたクラウンフィッシュのニモを、ふがいないお父さんが危険な外海を旅して探しに行くという物語である。

一見、子供でもわかる単純なストーリーなのに、なぜ大人が見てもこんなに面白いのか。その理由は、キャラクター作りの巧みさがまずあげられる。ニモは、人間で言えば軽度の障害者で、おまけに過保護に育てられ、社会性がやや不足気味である。そして真の主人公である父・マーリンは、自分が無力だったため、過去に大切な人を失ったというトラウマがあり、まともな子育てができない男である。

ほかにも主要なキャラクターがいくつか出てくるが、どれも単純な絵柄の中に複雑な過去をにおわせる、深みのある設定となっている。そのため、大人が見ても共感しやすい。感動的なセリフの数々も、こうしたキャラクターがしゃべってこそ客の心に届く。

こうして、きちんと肉付けされた主人公のマーリンが、海の冒険での数々の出会いを通して、いっぱしのオヤジに成長して行く物語は、ベーシックながら完成度の高い感動的なものである。また、大筋は平凡でも、細かいひねりが効いていて読みにくいストーリー展開は大人の鑑賞に充分堪えるものだ。

エンタテイメントとしての見せ場の作り方、アイデア、笑いの取り方、伏線の張り方の上手さも、さすがに手慣れたもので非の打ち所がない。映像や音響のクオリティも、劇場用コンピュータアニメとしては、最上級の部類に入るものだろう。

これほど出来がよいのだから、史上最大のヒットというのもうなづける。恐らく日本でも、爆発的な人気を呼び、リピーターが続出することだろう。そして向こう10年以上は、さまざまな関連グッズがディズニーランドあたりで売られ、会社の懐を潤してくれることだろう。ディズニーの新たなスタンダードキャラクターの誕生である。

お正月映画最大の話題作にして、最大のオススメ。『ファインディング・ニモ』は、子供から大人まで必見の傑作である。



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