『CATHARSIS カタルシス』15点(100点満点中)
不自然の連続に興味がそがれる
連続少女殺人事件の犯人である14歳の少年が、3年後に出所したあとの、家族の苦悩と再生を描いたドラマ。
監督は、新聞をにぎわす、10代の凶悪犯罪からインスピレーションを得て、この映画を作ったという。だが恐らく、突っ込んだ取材やリサーチは行っていないであろう。というのも、この映画の描く「加害者とその家族」の様子には、常識で見て明らかに不自然な点が多く、まったくもって納得できない点が多すぎるからだ。
また、監督の出身地ということで、種子島が舞台となっているが、人目を避けたい一家が、よりにもよってあんな辺ぴな場所に里帰りするという設定自体が、私にはついていけない感覚だ。あれじゃ、よけいに目立つし、孤独になるし、社会復帰できなくなる。映像面の面白さを重視するのは決して悪いことではないが、それが今回シチュエーションの不自然さを際立たせる結果となっている。
そうした点をふまえると、本作は一見社会派に見えるが、決してそうではない。事件を材料に、監督の頭の中で出来あがっている何かを表現したという、アーティスティックな抽象画みたいなものだ。理解しやすく作ろうという、観客への配慮はほとんどないから、心してかかる必要がある。