『スカイハイ 劇場版』30点(100点満点中)
北村カラーを出すのはいいが、いつもの悪いクセも出てしまった
ヤングジャンプ連載の人気マンガが原作のテレビドラマの映画化。不慮の事故などで死んだ人間がやってくる『恨みの門』の門番イズコ(釈由美子)を中心としたお話。劇場版では、イズコは釈ちゃんではなく、別の女優がやっているが、さてその理由は……?
この劇場版の監督は、『あずみ』と同じ、北村龍平である。この監督はアクションが得意なので、本作の見せ場も当然それがメインとなる。だが、私に言わせれば、北村監督はアクションシーンを撮るのは(邦画のなかでは)うまい方だが、アクション映画を作るのは上手ではない。
アクション映画の肝は、決してアクションシーンだけにあるのではない。むしろ、それ以外のシーンでいかに客のボルテージを盛り上げるかが重要で、その頂点に満を持して激しいアクション出してこそ、お客さんが大きな快感を得られるのである。
それなのに、この人の映画にはメリハリと言うものが無い。簡単にいえば、最初から最後まで、肩の力が入りすぎである。たとえば『スカイハイ』では、なんでもない普通の場面でもカメラワークやライティングにこだわっているのがわかるが、そんな事をする必要はない。むしろ、あまり重要でない部分はオーソドックスな手法でさらっと流した方が、その後の見せ場との差が際立ち、良い場合もあるのだ。
そこを、とにかく個性を出そうとばかりしているから、全てのシーンが思わせぶりで、結果的にやたらと時間が長くなる。『スカイハイ』も、上映時間は2時間2分もある。いくらなんでもこの程度の内容に2時間超えは長すぎる。『あずみ』の失敗がまったく生かされていない。
また、得意のアクションシーン(主にチャンバラ)についてだが、今回主演の釈由美子は、身体が幼児体型で、非常に貧弱なので、もっと見せ方を工夫してやらないと、ただの子供のお遊びにしか見えない。
彼女は、アクション俳優として一部で評判がいいが、決して動きが良いわけではないと私は見ている。なにより身体が細すぎて、パワーが感じられない。(以前、近くで本人を見たとき、あまりの線の細さに私は仰天した)素晴らしいキャラクターを持った女優だとは思うが、使い方は相当難しいのではないか。なんにせよ、釈ちゃんにはもっとトレーニングを積んでくれといいたい。
剣などの小道具のおもちゃっぽさや、笑いの寒さはいつもの北村作品通り。戦い中に、両者が意味も無くカッコをつけるポーズなども、ユーモアのセンスがあれば楽しめるのだが、どうもクソ真面目にそれをやってしまうので、見ていて気恥ずかしい。
マンガの原作とテレビドラマで固まっていたイメージに、北村カラーをを取り入れた心意気は評価したいが、映画として面白くなければそれは全て批判の対象になってしまう。このままでは、北村監督も先がない。せっかく優れた個性があるだけに、それだけは避けてほしいところ。