『花』60点(100点満点中)

物語はよいが、演出がいまいち

動脈瘤で仕事を失った若い男が、依頼主を鹿児島まで連れて行くという運転手のバイトを引きうけるというロードムービー。

この依頼主のオジサンの目的がなんなのか、なぜクルマで向かうのか、なぜ鹿児島なのか、そのへんの謎が徐々に明かされていくと共に、大きな感動が観客を襲うというドラマである。

初の監督作品という事でか、ストーリーは◎、演出は×といった印象である。主演の二人(大沢たかお、柄本明)はどちらも演技派で、存在感のあるいい俳優だが、肝心なシーンでのセリフが赤面ものだったりなど、持ち味を演出の悪さに殺されている。

「鹿児島までの長い旅を続ける二人の男」という現在のドラマと、「同じルートを旅する若い夫婦」の過去の回想場面が交互に展開されるが、過去のシーンに出てくる牧瀬里穂の存在も良い。観客に切ない印象を残す名演だ。

ストーリー上の不満としては、大沢の彼女の問題が放置されたままで終わってしまうという点があげられる。ラストにチョイと扱ってあげれば、もっと収まりが良いと思うのだが。

また、重要な小道具であるクルマに味がない。スズキの小型SUVは、色を水色に塗ったのは良かったが、どうも風情がない。

それでも、そこそこは泣けるし、いい役者が揃っているので、見て損の無い出来ではある。愛って素晴らしいな、と素直に感じられる感動ドラマといえるだろう。



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