『ポロック 2人だけのアトリエ』40点(100点満点中)
映画を見ると、本物の絵のほうを見たくなる
キャンバスに、絵の具をビシャビシャとぶちまけ、その飛沫で作品を作り上げるアクションペインティング。総模様画とも呼ばれるこの手法で知られるアメリカの天才画家、ジャクソン・ポロックの生涯を描いた伝記映画。原作はピューリッツァー賞を、映画はアカデミー助演女優賞を受賞した。
この映画は、主演のエド・ハリスという役者が、はじめてメガホンを取った作品でもある。この人は、自他共に認めるポロックファンで、彼の伝記映画を作ろうという執念は、もう15年にも及ぶというのだから凄い。
さらに、劇中の絵画制作シーンをリアルに見せるために、10年間、ポロックの技術を学び続けたというのだから半端ではない。実際、エド氏が劇中で見せるアクションペインティングは、非常に手馴れた動きで、真に迫るものがある。そんなわけだから、なんといってもこの映画の見所は、彼のすさまじい役作りと演技にある。
ただ、伝記映画といっても、ある程度ポロックの人生について知識がある人でないと、理解しにくい作りになっている。監督も、膨大な原作の要素のなかで、どこを省略して行くかには悩んだだろうが、結果的には万人向けとは程遠い、ポロックの熱烈ファン向けの作品として出来あがった。
だから、ポロックの名前と代表作を知っている程度の教養の人間には、ちょっときつい内容であるといえる。もちろん、この私もそこに含まれているので、『ポロック 2人だけのアトリエ』は、あまり楽しめた作品とは言えなかった。正直に言わせてもらえば、「映画より、本物のポロックの絵を見にいったほうがいいや」と感じた。日本にも、東京に限らず、いくつか所蔵する美術館があるのだ。