『ヘル』30点(100点満点中)
今時、よくこんな企画を通せたと感心
アクションスター、ジャン・クロード・ヴァン・ダム主演の刑務所モノ。
ジャン・クロード・ヴァン・ダムという人は、有名になればなるほど作品がB級B級へと傾いて行っている人で、おそらく本人も自覚して、そのへんを楽しんでやっているのであろう。プリンセス・テンコー(引田天功)とスキャンダルになったりなど、彼はB級スターの鑑みたいな男である
『ヘル』も、どう考えてもスポットライトを浴びる事のない、華やかな要素ゼロのB級アクション映画である。なんにしても、今時男囚ものという題材からして渋い。きっと本作も、1年後にはテレビ東京の木曜洋画劇場あたりで、ひっそりと放映される事になろう。
『ヘル』は、他の刑務所もの映画の伝統をふまえ、「理不尽な投獄」→「そこはひどい無法地帯」→「看守の横暴」→「やがて友人ができる」→「囚人たち団結」という流れをたどる。もちろん、女はまったく出てこない。
この刑務所の無法ぶりが半端ではない。地雷地帯での作業や、公開殺し合いといった、ギャグ1歩手前のネタが次々現れる。
叙情的なメロディの音楽にのって、テキトーすぎるストーリーが展開されたかと思うと、とてつもない御都合主義で唐突にラストを迎える。まさしく刑務所ものの見本のような映画である。
2003年現在、こんな企画を通せる男は世界広しと言えどもヴァン・ダム以外には存在すまい。彼を応援したい方、新品の刑務所アクションを見たい方は、ぜひ出掛けていってほしい。本作のヴァン・ダムは、トビゲリもできない、フツーの男役だが、それでも彼の魅力はたっぷり味わえる。ファンにとっては愛すべき一本だ。逆に言えば、ごくフツーのライトな映画ファンは、この映画はやめておいた方が良いだろう。