『ティアーズ・オブ・ザ・サン』70点(100点満点中)
これだからアメリカという国が私は好きだ
ブルース・ウィリスとモニカ・ベルッチ2大スター競演の軍事アクション&感動ドラマ。
いやー、これは凄い映画であった。私達のように、毎日3本も4本も映画を見ていると、大抵のものには心を動かされる事も無くなってしまうのだが、『ティアーズ・オブ・ザ・サン』は、久々に「これだよこれ!」と叫びたくなる作品であった。
ブルース・ウィリス率いる特殊部隊SEALSが、ある女性医師(モニカ・ベルッチ)を戦地から救出せよとの命令を受ける。ところが、彼女のもとにいる、あわれでいたいけな現地民(女子供&年寄り)たちを見捨てられず、彼らはなんと司令部からの命令を無視し、命を捨てる覚悟でつれだす事を決定するのである。
ちなみに、この映画におけるいたいけな現地民とはキリスト教徒で、武器を持っていない彼らを大虐殺する憎き悪者達は、イスラム教徒という設定。
モニカ・ベルッチ嬢だけを助けて戻れば、誰一人死なずにすむ作戦だったものを、何十名といる現地のお年寄りをひきつれ、徒歩で脱出するという無謀な命令違反に出たために、特殊部隊隊員達は、生き残る可能性がほとんど無い壮絶な戦いを余儀なくされる。
やがて弾薬も切れ、300名を越す鬼のような残虐集団(注・イスラム狂信者)に包囲され、さすがの世界最強ハイテク米軍の最精鋭たちにも、ついに最期の時が訪れたかと思わせる。
だが、アメリカの誇り高き兵士たちは決して1歩たりとも引きはしない。よわき者と、固い絆で結ばれた仲間たちを守るため、愛する家族の写真と手榴弾を握り締めながら、敵に特攻して死んで行くのである。星条旗よ、永遠なれ。
純度100パーセントの米軍礼賛映画である。ハリウッドは戦争が始まると、かならずこの手の映画を1つ2つ作るが、ここまで露骨なものは久しぶりに見た。しかも公開は、狙ったようにイラクともめてるこの時期だ。
映画としては、なんといっても人間描写がなっておらず、ブルース・ウィリスというスターの個性に頼り切り。なぜ彼が、現地民たちを助ける気になったのかという点にも、説得力を持った理由付けがなされていない。ベテラン軍人ともあろうものが、急に同情心を持ったというわけでもあるまいに。
私にはその理由として、モニカ・ベルッチ嬢の深い深い胸の谷間以外に妥当な理由が思い付かなかったが、真相はいかに。
米軍バンザイ映画ではあるが、なにしろ音響や映像が凄いので、部分部分では結構泣ける。矢尽き、刀折れても弱者を守るために戦う兵士たちの姿は、なんだかんだいっても感動的である。ぼくもおとなになったら、あめりかぐんにはいるぞ。
海軍が全面協力し、主要キャストは本物の訓練を受けているので動きが本格的。空母もFA/18も本物が飛んで行く。すごい迫力だ。
しかし、残念なのは、こういう映画が、当のアメリカ国民にすら、徐々に受け入れられなくなってきているということだ。『ティアーズ・オブ・ザ・サン』は、こんなにも面白いのに、肝心のアメリカ人にはあまり評判がよろしくなかったという。
反米反戦気分の仲間たちと見にいって、本気でけなし合うも良し、本格的な軍事アクションとして気楽に楽しむも良し、いずれにしても、この時期に見てこそ楽しめる作品である。ところで翻訳者の戸田奈津子チームのみなさん、軍事用語をヘンに意訳してしまうのはどうかと思いますよ。