『DEAD END RUN』40点(100点満点中)

もう少し脚本にも力を

59分の上映時間を、25分、20分、15分の短編に分けた、オムニバス作品。監督はこの映画を、新しい娯楽映画とする事を目指して作ったという。

デジタルビデオとフィルムを使い分けた映像は、思い切ったアングルを多用し、なかなか良い。安っぽさを感じさせない。各短編の始まりには、画面がブラックアウトし、音響だけの演出を行うという趣向もあり、確かに新鮮だ。

しかし、上映時間を短く区切る事も含めて、こうした仕掛けにはチャレンジ精神が感じられるが、それらが融合して『面白さ』を生み出す所までいっていない。つまり、「個性的だが、面白くはないなぁ」といった印象だ。残念ながら、「実験的エンタテイメント」の域を脱していないのだ。娯楽映画においては、突飛な手法も目を引く仕掛けも、「面白さ」という主目的を達成していなければ、それだけで高く評価はできない。(逆にいえばシンプルな演出法でも、面白ければ勝ちである)

では、なぜ面白さがイマイチなのかと言えば、それは脚本の完成度の低さに尽きる。思い付きで作ったようなひねりのないストーリーを、いくら派手な手法で飾ったとしても、お客さんはついて行かない。物語の面で、やりたい事がはっきりしていない。もっと一本、突きぬけた特徴が欲しい所だ。

せっかくのチャレンジも、これでは「ヘンな映画だったね」で忘れ去られてしまう。まだまだ良くなる予感は感じられただけに、惜しい所であった。

まとめとしては、「比較的低予算ながらも、これだけ変わった事ができるんだな」という点に興味のある方は、とりあえずみてください、といった感じである。



連絡は前田有一(webmaster@maeda-y.com 映画批評家)まで
©2003 by Yuichi Maeda. All rights reserved.