『ジョニー・イングリッシュ』75点(100点満点中)

笑いとアクションの高度な融合

『ミスター・ビーン』でおなじみのイギリスのコメディアン、ローワン・アトキンソン主演のコメディ映画。

『ミスター・ビーン』シリーズのように、ローワンのギャグを見せるだけの映画にはなっていない。まっとうなストーリーを持つ、スパイアクションとして成立しているので、「あの手のコメディを映画館にわざわざ見に行く気にはならない」という方にもオススメできる。

たとえばアクションシーン、これが本格的である。プライベートでもアストンマーチンのオーナーであるローワンが、自ら演じたというカーチェイスシーンなど、なかなかのものだ。霊柩車と大型バイクのトライアンフ、そしてこの美しいスポーツカー、アストンマーチンによるアクションは、こちらを驚かせるアイデアが豊富だから、きっと大満足できるはずだ。

肝心の「笑い」のほうは、もっと大満足。英国情報部を舞台にしたスパイ映画、しかもコメディともなれば、誰でも思い付くのが007シリーズのパロディであるが、ローワンはそんな安易な事はしない。彼は、プロのコメディアンだから、そんなありふれた(もういいかげんに見飽きた)ネタなどには目もくれず、自分のオリジナル芸一本でこちらを楽しませてくれる。これは個人的に、高く評価したいポイントだ。

ギャグ映画にありがちな、いいかげんなストーリーのオチャラケ映画にせず、本格的なスパイムービーでありながら、本物の「芸」で笑わせるテクニカルな作り。『ジョニー・イングリッシュ』は、今週公開作品では、なかなかのオススメである。ぜひおでかけあれ。



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