『陰陽師II』40点(100点満点中)

パート2のジンクスを破れない典型例

野村萬斎主演の人気シリーズ第二弾。平安の都を守る陰陽師、安倍晴明の活躍を、CGを駆使した派手な映像で描く。

本作のポイントは、人気者を集めたキャストの話題性と、邦画のなかではスケールの大きな特撮映像であろう。順に解説する。

メインキャストは前作と同じ。独特のふてぶてしさが頼もしい主人公、野村萬斎と、相変わらずヘタレな伊藤英明の駆け引きは、前作同様の楽しさ。そこはかとなく漂うホモセクシャルな雰囲気がなかなか良い。

2で登場する新キャラクターの筆頭は、物語のキーとなる姫を演じる深田恭子だ。フカキョンは、本作でヌードを披露しているという事で話題だが、これはマスコミによる意図的な話題作り、お祭りみたいなものなので、期待してもムダである。ホリプロのアイドルのガードは固いのだ。(本人にしちゃ、ムネがでかすぎる……。)

もう一人、新しい敵役の中井貴一であるが、前作の真田広之のインパクトが強すぎて、印象が弱まった点は否めない。前作では、のっぺり顔の主人公の野村氏より、ハンサムな悪役の真田氏のほうを応援したくなった方も多かっただろうが、『陰陽師2』の悪役はあまり魅力が無いので、そうした気持ちにはならないだろう。

日本経済のデフレも問題だが、悪役のデフレも、こうしたアクション映画のPART2にとっては大問題である。少年ジャンプのマンガの例を出すまでも無く、悪役はどんどん強くなって行くのがシリーズものの宿命であるが、『陰陽師2』の悪役は、設定はともかく前作よりは明らかに弱そうだ。スケールが小さいため、前作に比べて物語の緊迫感も少なくなった。

要するに、中井貴一には覇気が無いのである。真田広之には、「国をぶっ潰してやる」という気迫が感じられたが、最後まで中井貴一は、ミキプルーンでも飲んでそうな、のどかな男のままなのである。

さて、キャストについてはその辺にして、もう一つの見所である特撮関係を。CGやワイヤーワークを使った見せ場は、前作同様おもちゃっぽいものだが、まあ、これはこれで味があるともいえる。ただ、上に書いた様に、今回は作品として、スペクタクルの規模がしぼんだ印象なので、このおもちゃっぽさが、悪い方に働いている気がする。

ストーリーも先が読めてしまうし、ひねりがない。ヒットしたから続編を作ったという安直さが見える出来である。だから、あまり多くを期待せずに、気楽に見るのが良いだろう。前作のファン以外を引きこむだけの力は、このパート2には無いと私は判断する。アクションシーンを含め、もっとたくさん新アイデアを盛りこまないと、パート2は成功しない。『陰陽師II』はそんな、典型的な例である。



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