『夕映えの道』50点(100点満点中)
低予算のわりに安っぽさは全く無い、品の良い映画
パリで一人暮らしの老女を主人公に、老いというテーマを、血のつながりの無い中年女性とのつながりのなかで描くドラマ。岩波ホールで公開される事からわかる通り、通好みのしっとりとした、格調高い作品である。
しかし、実はこの映画、かなり低予算で作られたものである。主人公の老婆役は、新聞広告で一般公募して決定。もう一人の主人公である中年女性役は、監督の住むアパートの隣の住人。音楽担当者も、ギターが趣味の同じ住民。撮影場所となるアパートの部屋は、女優の私室を使って撮影したそうである。デジタルビデオ撮影で、編集も自前でやったそうだ。監督自身や息子も出演しており、まさに手作りの映画といえる。
しかし、後から聞かされなければ、そうした金銭面での苦労という事情には気づかなかっただろう。出来あがった映画はちゃんとしており、まったく安っぽさは感じられない。これはパリのもつ街並の美しさと、監督の美的センスのおかげといえよう。
余韻を残す、感動的なラストもセンスが光る。まあ、こうした映画を見慣れない方には、途中、かなり退屈を感じるとは思うが、たまには静かな気持ちで、こうした映画を鑑賞するのも悪くはない。