『トゥームレイダー2』40点(100点満点中)

ヤン・デ・ボンはララ・クロフト像をぶち壊した

人気アクションゲームの映画化PART2。監督が『スピード』のヤン・デ・ボンに変更になり、前作以上の膨大な製作費で作られた。

ヤン・デ・ボンは、前作の監督もやりたかったと公言するほどの『トゥームレイダー』ファンであるが、続編を作るにあたって、プロデューサーと相談して、『今回は、主人公ララの内面を描く』という方針で挑んだという。そうした方針を打ち出すことでわかる通り、監督のララ・クロフトへの思い入れは、随所に感じられるが、それが少々強すぎて、このシリーズ本来の面白さを見失ったというのが、私の分析だ。

具体例をあげると、アンジェリーナ・ジョリー演じるララ・クロフトは、今回元カレと共に冒険をするのだが、この男は女たらしで、以前ララをフッたという設定である。

だからララはこの男にいまだに未練タラタラの様子で、あげくの果てには半泣きで「●●●……」(ネタバレのため伏せ字)などとのたまう。

これがアンタたちのいう“ララ・クロフトの内面”か! と、突っ込みたくなるのも当然だ。なぜなら、『トゥームレイダー2』で描いているララ・クロフト像は、明らかに前作のそれとは違っているのだから。

本作は、映画『トゥームレイダー』の続編であるのだから、そこで作ったキャラクターのイメージを壊すような事をするのは間違っている。極寒の地でもコートの前をはだけ、胸の谷間をみせつけて歩くララや、真っ白なドレス姿を披露したかと思うと、次の瞬間にはその姿のまま巨大な拳銃で戦う、あの“強いヒロイン”はどこへいったのか。

『トゥームレイダー2』のララは、前作ではパッド3枚で強引に作った胸の谷間もまったく見せてくれないし、ゲーム版でもおなじみのショートパンツ&タンクトップの衣装もない。一本三つ編み&長い前髪というヘアスタイルも変更してしまった。重要な要素であるアクション自体も全体的にパワーダウン。特にいただけないのが、トレードマークの2丁拳銃による豪快なガンアクションがほとんど消え去った事だ。これでは、あまりに変えすぎといわざるを得ない。

アクション映画の続編というものは、前作の良さを引き継いだ上で新アイデアを追加し、新しい技術と増えた製作費の力でパワーアップするというのが基本。しかも前作『トゥームレイダー』は、斬新なヒロイン像を作り出し、その後の女性ヒロインによるアクション映画に影響を与えたほどの作品だ。

恋愛沙汰にウジウジ悩むこのパート2は、その前作の良かった部分を踏襲しているとはいえぬ作りで疑問が残る。

私は、人間だろうとバケモノだろうと、相手がワルなら良心の呵責すら見せず、自慢の巨大拳銃でバタバタとなぎ倒し、ニヤリと不適な笑みを浮かべる、そんなスーパーお嬢様のララ・クロフトを見たかった。当然、真冬でもムネの谷間はちゃんと見せるという、バカバカしくも楽しい遊びも欲しかった。

3作目の製作も決定したということだが、願わくばこの監督にだけは、降板していただきたいところだ。



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