『ビタースウィート』85点(100点満点中)

17歳の純粋さに感動できる、青春ドラマの傑作

性格も家庭環境も全く違う、二人の少女を主人公に、ティーンエイジャーの心を瑞々しく描いたドイツ製青春映画。

監督は、相当な数のティーンたちにリサーチをしたそうで、本作は細かい部分までとてもリアルに“今のドイツ少女”たちを表現している作品といえる。製作側が、自身の10代の頃の経験だけに頼らずに描いた点がうまく作用しており、メインターゲットの20〜30歳のみならず、当の10代の少女たちがみても、納得できる内容になっているのではないか。

ちなみに、映画の冒頭で、女の子二人が男子部員たちのシャワーシーンを覗く場面があるが、こんな事ホントにするもんかねぇ、と思った私は、ドイツの高校にいっている知り合いに早速聞いてみた。すると彼女いわく、「リアルだ。充分あり得る」だそうである。そう考えてみると、男の子のお尻ばっかり追いかけるカメラも、彼女らの視線をリアルに表現しているというわけか。

なお、『ビター・スウィート』は、日本人の我々が見ても、字幕のつけ方が上手いのか、少女たちの会話がとても自然で、物語にすんなり入っていける。劇中の少女たちが語るセリフは、要所要所で心に響き、とても共感できた。

選曲のセンスも良い。映画の内容にマッチしているのみならず、聞いているだけでも楽しくなれるほどだ。

『ビタースウィート』は、主演の女の子二人がとてもキュートだし、ストーリーにも無理がなく、90分間こちらを引き付けるだけの魅力に溢れている。ラストでみせる二人の会話には、10代特有の純粋さが溢れ、切ない感動にうちのめされる。

少女を主人公にした青春映画としては、本作はかなり上質な部類にはいる。私はとても気に入っているし、できることなら多くの人に本作を見てほしい。感動的なこの物語にきっと満足できると思うし、さわやかな気分になって劇場を後にすることができるだろう。



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