『シモーヌ』60点(100点満点中)
リアリティには目をつぶって気軽に楽しむのがコツ
『トゥルーマンショー』や『ガタカ』など、風刺の効いた近未来ファンタジーを描かせると上手いアンドリュー・ニコル監督による、コメディドラマ。
CG製の女優に世間が騙されるという設定は、いくら技術が進んでもそう上手くはいかないとわかっているものの、なかなか面白い。主人公にアル・パチーノという演技派を持ってきたことで、アホらしくなりがちなこの物語を、強引にまとめているのは見事と言えよう。
『シモーヌ』は、CG女優役のレイチェル・ロバーツの名前をクレジットから外すなど、「もしやホントにCG?」と思わせる話題作りが空回りし、米国での成績が平凡に終わった。また、日本でも、諸般の事情で公開時期が前倒しになり、宣伝もろくに出来ないうちに(女性誌ではまだ、ろくに紹介さえされていないはずだ)公開するという憂き目にあった不運な作品だが、中身は決して悪くない。普通に見にいって、普通に楽しめる映画である。
レイチェル・ロバーツは、GAPやラルフローレンのモデル出身で、“理想の女性”を演じるだけあって、すばらしいルックスである。これなら、全米中が夢中になるというストーリーにも説得力が出るというものだ。
なお、夢中になったのはニコル監督も同じだったようで、彼は本作をきっかけに、レイチェルと結婚してしまい、今や子供もいるという話である(先日親子3人で仲良く来日した)。
まとめとして『シモーヌ』は、実際ありえないフィクションなので、リアリティは薄いのだが、そのへんをあまり追及せずに、気楽に楽しむつもりで見るとなかなか面白い映画だ。まあ、おわって5分で忘れ去りそうな気軽な娯楽映画なので、あまり肩肘はらずに見るといい。エンドロール後に1シーンあるので、お見逃しなく。