『偶然にも最悪な少年』20点(100点満点中)
偶然にも最悪な映画か
CM界出身のグ・スーヨン監督が、自作の小説を映画化した作品。主人公の在日朝鮮人の少年が、姉とエッチした後に自殺されてしまい、彼女の死体と共に九州方面へ向かうロードムービー。歌手の中島美嘉の出演も話題だ。CM出身の監督という事で、映像のセンスはさすがにいいのだが、音楽が少々うるさい部分がある。
ストーリーは上記の通り破天荒で、登場人物の行動も相当とっぴなもの。精神の混乱を表すかのように、奇をてらった行動ばかりする。ただ、主人公のみならず誰一人まともな人間が出てこないので、観客としては落ち着かない。そこに何かしらの意味を見出そうと頑張れる方でないと、見ているのがつらい。
いじめられっ子という設定の主人公役、市原隼人は、16歳ながらいい演技をしている。みているだけでムカツク態度は、「アレじゃどう考えてもいじめられるわな」と感じさせるに充分だ。
監督によると『偶然にも最悪な少年』は、問題大ありなこの設定ながら、軽いノリで作った、ということだ。ということは、客も軽いノリで見たほうが良いということか。軽い乗りで作られたものでも、入場料金は同じ。そのあたりをもう少し考えてもらいたいところだが。
ただ、そうはいうが、在日の少年が、お前ら日本人はオレたちを昔、強制連行うんぬんと叫ぶシーンは、ほかのシーンとはかなり異質で妙に後味が悪い。こういう特殊な歴史認識を、登場人物の口を借りて主張するのは個人的にはいかがなものかと感じるが、これも表現の自由というわけだ。
結論として、中島美嘉のファンというだけで見に行くには、かなり勇気がいるという事だけはお伝えしておこう。