『デス・フロント』30点(100点満点中)

低予算だというのにVFXと主演男優が話題になりそうな、奇妙なホラー映画

『リトル・ダンサー』のジェイミー・ベルくんを主演に据え、比較的少ない予算で作られた、イギリス製戦場ホラー映画。なんとも特異なジャンルである。

第一次世界大戦中という設定で、撮影場所はドイツ軍の塹壕跡だけ。確かにあまり金はかかっていなそうだ。……と思って油断していると、最後になって、まるで、そこに製作費の大半を集中投入したかのような、ビックリ仰天のCG残酷シーンが飛び出て楽しませてくれる。なんだか、地方の寂れた遊園地のお化け屋敷のような趣きだ。

『デス・フロント』は、ようするに、戦場という怖い場所でホラー映画を作ったらもっと怖いだろう、という発想で作られた、ごく普通のホラー映画である。ボボボーという、こちらの交感神経を刺激するような、低音の怖い音楽がずっと流れ、客の予想もつかない方向から、何かが出てくるというような、ごくまっとうなホラーなのである。

『デス・フロント』を、前半、中盤、後半の3つにわけたとする。すると、前半と後半はそこそこ面白いが、中盤があまりよくない。一人一人死んで行くという、始まる前から予測される通りの展開が続くだけで退屈なのである。こちらは、「さっさと全員で逃げろよ」と歯がゆくなるが、なぜか彼らは留まりつづけてぶち殺されるのである。いとあわれ。

このような奇妙な本作を、傑作『リトル・ダンサー』の次の主演作に選んだジェイミー・ベルくんは、実に面白い少年だ。彼の女性ファンが気軽に『デス・フロント』に出かけて行って、帰り道にどんな表情になっているかを想像すると、私はその場に居合せられない事が残念でならない。



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