『ドラゴンヘッド』55点(100点満点中)

アイドル映画としてはまあまあ

松田聖子の娘のSAYAKAちゃんが初主演したSF映画。同名のベストセラーマンガの映画化である。なかなか高い点数の理由は、特撮含む映像の出来が良いというのが理由だ。逆にいうと、それ以外は……、という事でもある。

オールウズベキスタンロケということで、日本での撮影では難しい、スケールの大きな映像が出来あがった。爆発シーン1つとっても、日本の法律に縛られないので、火薬の量なども大盤振る舞いできたそうである。また、まるごと新幹線や、渋谷駅前の街並を、セットで作ったというのもすごい。迫力満点である。

ストーリーも、「修学旅行中に新幹線がトンネルで事故った。生き残ったカップル(SAYAKA&妻夫木聡)がトンネルの外に出てみたら、世界が崩壊してた」というアイデアが抜群で、一気に観客の興味を引きこむ。

だが残念な事に、この映画は役者の演技力のなさと、見ていてしらける子供っぽいセリフ、そして主人公たちがしばしば見せる不自然な行動によって、せっかくの映像とストーリーが死亡寸前である。また後半の、謎の食糧発見あたりから先は、漫画を映画化した場合に良くある、『映像化した途端にリアリティを失い、しらける』の典型的パターンで、オトナの鑑賞には耐え難いものがある。

まとめとして『ドラゴンヘッド』は、邦画としては良くできた特撮映像、これを見るだけで満足できるという、高校生くらいまでの若い方にはすすめたいが、ストーリーや役者の演技、完成度といった映画としての総合的な満足を期待する方には向かないだろう。アイドル映画プラスαだと納得した上で出掛ける事をアドバイスしておく。



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