『レボリューション6』80点(100点満点中)

いつしか道を外れてしまった者たちを勇気づけてくれる感動のドラマ

落ちぶれた左翼運動家たちの、現実と再生を描いたドイツ製ドラマ。

若かりしころ、市民運動や反権力運動に参加して、今は完全に経済社会の負け組となった主人公の二人組。彼らが、仲間たちと15年前にしかけた爆弾が、今ごろになって爆発して大騒ぎになる。慌てて、音信不通だった仲間たちと久しぶりの再会をはたすと、みなは全く違った人生を歩んでいた、……というところから物語は始まる。

『レボリューション6』は、非常にリアルなドラマだ。勝ち組、負け組の落差がハッキリしてきた現在、この作品が描くテーマは非常に現代的だ。主人公たちのように、安定した人生のレールから一度でも外れて、苦労した経験のある人ならば、彼らの辛苦は身にしみて理解、共感出来るはずだ。

特に、敗者復活が難しい日本の会社社会では、1度でも就職先を誤り、(ヘッドハンティング以外の形で)転職をすると、もうろくな就職先など無く、その後の人生が狂うほどの大きな苦労をする事も珍しくない。だから、反権力運動などに関わった事が無くとも、『レボリューション6』の主人公たちと同じ境遇の、たとえば失業者やフリーター、引きこもりのような弱者は、相当な数いるだろう。

偶然にもこのレビューを読んでいる、そんな苦労人の方がいらしたら、私オススメの『えびボクサー』とともに、この『レボリューション6』をぜひ見にいってほしいと思う。

『レボリューション6』は、心を震わせる旋律のBGMと、リアルで共感できる心理描写で、そんな、社会の底辺で必死に生きている人々を泣かせる映画だ。終盤には、力のないものが大きな力を持つものたちに一矢を報いる、痛快きわまるアクションシーンの見せ場もあり、映画的満足度も高い。

『レボリューション6』は、過去のわずかな失敗のせいで、いつしか道を外れてしまった男たちへの救いの物語。最後まで、決して劇的な変化は訪れない。だが、なんと希望に満ちたラストであろう。本作は、人生に絶望しかけている人に贈る、最高のプレゼントだ。騙されたと思って、劇場に行ってみてほしい。



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