『28日後...』70点(100点満点中)

よく出来た人類滅亡系ホラー映画だ

本国イギリスで大ヒットした、終末ホラー。……といっても、明確にジャンル分けしにくい内容で、戦争映画やSFの要素も含む、ユニークな作品である。

ただ、純粋な人類滅亡系ホラーとしてみても、充分に面白い。シリアスなので、見ていて気が抜けないのである。描写もリアル志向だから、男の局部もノーカットで出るし、目玉を突き刺す場面もそのままモロに写す。追いかけてくるゾンビ役は、陸上選手が演じてるから脚が早いし、兵士役の役者たちは、皆1週間、本物の新兵キャンプに参加して、銃の扱いや軍人としての立ち居振舞いを勉強している。

つまり、決してノー天気に作ったわけではない、性根の座った映画なのである。こういう映画は、たとえ素人の観客が見ても、「なにか違うな」とわかるものだ。

とはいえ『28日後...』は、決してハリウッド映画のように贅沢な製作費で作ったわけではないから、全編デジタルビデオ撮りだし、CGなどは一部安っぽい所もある。それでも、音楽は物語にピッタリだし、何より客を引きこむストーリーテリングの上手さで、1分間もつまらない部分がない、楽しい娯楽映画になっている。

それでも、少々不満の残る部分もある。それは、監督の伝えたいテーマを表現するために、登場人物が時々不自然な行動をとるという点だ。それはたとえば、主人公が、どう考えても不要な危険を犯して小屋に入るシーンとか、スーパーマーケットでお気楽に買い物をするシーンとか、いくつかある。それぞれ、後の伏線になっていたり、深い意味を持たせてあるというのはわかるのだが、やはり不自然さを感じる。しかも、そこまでやっているのに、言いたい事があまり伝わってこないのである。

とはいえ、今週公開の中では、『28日後...』はもっともオススメしたい一本だ。普通の人が、普通に見に行って、充分に楽しめるこの娯楽映画を、若い人から大人の方まで、是非見て頂きたいと思う。



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