『アダプテーション』70点(100点満点中)
ニコラス・ケイジがハゲハゲ言うたびに、笑っていいんだか悪いんだか微妙に迷う
『マルコヴィッチの穴』の監督&脚本家コンビと、ニコラス・ケイジ(『ウィンド・トーカーズ』)の一人二役主演で送る、奇想天外な構成のドラマ。実在の本の脚本化を依頼されたが、上手く出来ずに悩んでいるうちに、ヘンな事件に巻き込まれる実在の脚本家の話。
主人公のチャーリー・カウフマン(N・ケイジが演じる)をはじめ、実在の人物がぞろぞろ実名で登場する。物語は、現実とフィクションの入れ子構造になっており、この2つが交互に展開するプロットは、非常に凝っている。こんなストーリーを思い付く、カウフマンの頭の中を1度見てみたい。さすが、ハリウッドで当代一の脚本家といわれるだけのことはある。
本作には、『蘭に魅せられた男』という原作があるのだが、タイトル(アダプテーション=脚色)の名の通り、映画の中身は、原作者が脚本を読んでビックリしたというほどの、独自性に富んだものになっている。まあ、何しろ原作者が実名で、しかもメインキャラで登場するのだから、驚くのも当然だろうが……。
前半は、ニコラス・ケイジのハゲネタ&デブネタが連発される。あまりにも情けない本作でのニコラス氏の髪型(と、腹の脂肪)をみると、これはまったくシャレになっていない。そのため、おそらく心優しい観客は、とてもこのギャグを笑う事は出来ないのだが、まったくお構いなく、このネタは劇中二万回くらい繰り返される。
ちなみにニコラス・ケイジは、前にも書いた通り、主人公であり、本作の脚本家でもある、C・カウフマン役なので、言ってみればこれは、カウフマン自身による自虐的な笑いである。そんなこんなで、思うように脚本が書けない愚痴を、前半は延々としゃべっているわけである。
ところが後半は物語が一変。ハリウッド風味の派手アクションまでが飛びだす展開に、椅子から落ちそうになる。前半のギャグ同様、シャレにならないほどの強烈なシーンが、数カ所の過激描写に出てくるが、これは「モザイクかけないでいいの?」といいたくなるほどショッキングなので、人によってはトラウマになるかもしれない。(さあ、見たくなったでしょ〜?)
このシリアスなラスト30分は、客のうち、何パーセントかは確実に引き、目を覆いたくなるだろう。だが、私としては、このぶっ飛んだアイデアと非凡さを買いたい。
そこに行くまでは、長くて、おまけにハゲネタがしつこくて、うんざりする場面もあるが、毒にも薬にもならない他のハリウッド映画に飽き飽きしている方には、『アダプテーション』は、悪くないチョイスだと思う。『マルコヴィッチの穴』あたりが好きな方なら、スタッフの多くが共通している本作は、なおの事楽しめる事だろう。