『ゲロッパ!』30点(100点満点中)
ギャグも題材選びもキャスティングも、全部センスが悪い
辛口批評家として名をはせる、井筒和幸監督の最新作。得意の人情コメディーである。
ジェームス・ブラウンのあの曲か……と、タイトルからなんとなくだめ臭さが漂うが、題材選びだけで判断するのは不公平であるから、できる限りニュートラルな気持ちで最後まで鑑賞した。
しかし、JBは最後までニセモノなので安っぽさが爆発だわ、ギャグは寒いわと、これが散々な出来であった。東京の下町育ちである私には、どうしてもこの映画のユーモアセンスが合わない。
ちなみに井筒監督は、最近でこそ「酷評はあり得ない、つまらなかったら金を返す」と強気だが、マスコミ向け完成披露では自信なさげで弱気だった。それをみて気の毒になった私は、「もっと自作に自信持て〜!」と思ったものだが、ようやくその”自信”だけは持ってくれたらしい。
さて、『ゲロッパ!』のメインとなるコメディ部分について。私が劇場でまわりを見ていた限りでは、笑いを取るべきシーンで、ことごとく外し、沈黙と寒い空気が流れていた。
役者たちは、工夫の無いドタバタを繰り広げるばかりで、みていてつらい。キャスティング、ユーモアのセンス次第で、これほどまでに映画というのは華を無くすものかと思う。
最後には、観客を泣かせるシーンらしきものがあるが、そこまでのギャグが不発のために、さほど観客の涙腺開放効果をあげられていない。いかに『笑い』の要素が難しく、重要なものであるかが良くわかる。西田敏行の芸達者ぶりが救いであるが、さすがにこれだけで映画自体をすすめるのは難しい
監督が、「酷評はあり得ない」というくらいなんだから、皆さんにも劇場にいって、その真偽を確かめてきて欲しいという気持ちもあるが、個人的には、井筒監督のギャグセンスが合わない人にとって『ゲロッパ!』は、かなり厳しい作品であろうと判断する。