『スウェプト・アウェイ』20点(100点満点中)

マドンナのおかげで必見ダメ映画に

74年の『流されて』のリメイク作品。ガイ・リッチー監督が、妻のマドンナを主演に撮ったドラマである。アカデミー賞の裏で開催される、その年のワースト作品を決めるラジー賞で、主要な賞を独占した、世界公認ダメ映画である。

で、その正体はというと、さすがは世界が認めたダメ作品だと、私も見ていて感心しきりであった。

『スウェプト・アウェイ』は、マドンナ演じる金持ちのゴーマン夫人と、彼女にずっといじめられていた貧乏船員が、無人島に流されて立場が逆転するという、一風変わったラブストーリーだが、こんな筋書きの映画を、自分の奥さんを主演にして作るという、監督の心理がまずキモチ悪い

一時は、おわん型の巨乳をさらけ出したヌード写真集で、世界中の男性ファンの目をくぎ付けにしたマドンナも、今や44歳。ヒフの異様なたるみ具合は、夫のガイ・リッチー殿には申し訳ないが、とても正視に耐えないものがある。

マドンナが、マジメにウェイトトレーニングで肉体を鍛えているという事は、ボディビルダーの端くれであるこの私、その三角筋のカットをみれば、一目でわかる。だがしかし、『スウェプト・アウェイ』のマドンナの身体は、どうみても急激なダイエットに失敗したとしか思えないのである。

なのに……なのに、である、本作の彼女は、あろう事か、出演場面のほとんどがビキニ姿なのである!(なんという事だ)

これが、せめてガイ・リッチー氏以外の、つまりマドンナの夫以外の者が監督を勉めていたならば、ソフトフォーカスや引きなどの理性ある演出を使い、彼女の水着もイアン・ソープ選手愛用の全身スーツ型を選択するなど、観客の角膜の保護に努めてくれたに違いないのだが、不幸な事に、本作の監督は、まさにそのダンナ様なのである。

そしてガイ・リッチー監督ことマドンナのダンナ様は、あろう事か、やたらと妻の顔面のクローズアップを多用し、あげくのはてにはヌードまで出すという暴挙をおかしているのだ。

ただ、幸い乳首までは画面に写っていない。おそらく、編集担当者の勇気ある行動で、カットされたに違いない。命がけの彼の行動に、観客は深く感謝することであろう。彼のおかげで、何とか本作は、全米映画協会自主規制コードに引っかからずにすんだと思われる。

そんなわけで『スウェプト・アウェイ』最大の問題は、なぜヒロインがマドンナなのか? という一語に尽きる。

だが、そのおかげで、ゴールデン・ラズベリー賞(ラジー賞)も取れたし、ダメ映画好きにとっては見応えたっぷりだ。他の女優と監督だったら、間違いなくただのダメ映画に終わっていたこの映画は、この二人のおかげで必見ダメ映画になったのだ。そう考えると、狙ってやったとしたら凄い戦略ではないか。



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