『チャンピオン』30点(100点満点中)

中途半端な実話ドラマだ

実在のボクサーを描いた、韓国映画。さんざ苦労して、ようやくチャンピオンに手がかかったタイトルマッチで、あわれ試合中に死亡した選手の悲劇を映画化した。

主演のボクサー役の俳優は、どうやらよく練習したらしく、サンドバッグの打ち方など、とても上手い。だが、試合のシーンは効果音でごまかしているのがわかってしまう。たとえば、スローで顔を殴る場面など、インパクトの瞬間、猫パンチになるので、少々萎える。

恋人役の女優も、泣くシーンで涙が出て無いのがバレバレなので、またまたお客は萎える。

平凡な実話ドラマで、昔々、こういう事がありました、以上のものを感じることができず、ラストでも泣けない。もっと思いきって、ドラマチックに脚色するか、もしくは人物を魅力的に演出したら、話として面白くなるのだが。

こういう、中途半端な実話ドラマを見て思うのは、「いったい何がやりたかったのだろう?」ということだ。単なる伝記を作りたかったのか、実話をもとにした感動ドラマをやりたかったのか。そのへんのコンセプトをはっきり決めておかないと、こういう中途半端なものが出来あがるというわけである。

もっとも、リアルタイムでこの悲劇を見たことのある韓国人であれば、また別の感想を抱くのかもしれないが。



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