『ブロンド・ライフ』30点(100点満点中)
ロマンティック・コメディのキモがわかっていない
『トゥームレイダー』で主演したアンジェリーナ・ジョリーが、髪を金髪に染め上げて挑んだロマンティック・コメディ。
彼女が演じる主人公は、ニセモノの金髪がトレードマークのTVキャスターだが、まったく似合っていない。彼女の生き方自体も、この似合わない金髪同様、フェイクだという演出なのである。
そんな彼女が、怪しげな占い師に「きみ、あと7日で死ぬよ」といわれ、見栄やらなにやら、くだらないしがらみを捨て切って、ようやくまともな女として生まれ変わるあたりが、本作のラブコメとしての新アイデアである。
ところが、彼女が恋をする相手役のエドワード・バーンズの役柄が、どうも魅力が薄い。ロマンティック・コメディにおける男役などと言うのは、しょせん記号に過ぎないので、別に人間性を深く描けとか、そんな野暮な事をいうつもりは無いが、それにしても序盤の彼のセリフや態度には、まったく男としての魅力が感じられない。これでは、いかにラブコメとはいえ、物語としての説得力に欠けるといわざるを得ない。
また、アンジェリーナ・ジョリーも、余命1週間を知った後の行動で、なんだか観客の予想とずれたことばかりするので、感情移入しにくい。観客が登場人物に自分を重ねるという行為は、ロマコメのキモだというのに、これじゃいけない。
この二人の登場人物は、本来お客さんの心を一手に引き受ける存在であるはずなのに、まるで脚本家という神様が、空から糸で操っているような、ぎこちない行動ばかりをとっている。これは致命的な欠点である。おかげで、『ブロンドライフ』は、単純なムリヤリラブストーリーになってしまった。
それにしても、アンジェリーナ・ジョリーは、笑顔と普通顔の2種類しか表情がない。ララ・クロフトとしては最高だが、ラブコメのヒロインには、少々ふさわしくないかもしれない。