『チェーン』1点(100点満点中)

これ以下の映画はないという点で、見るべき理由がある

巨乳グラビアアイドルの小向美奈子が初主演するホラー映画。

なんというか、紹介のしようがないとしか、言いようのない映画である。若者たちの、不審な連続死。100%当ると噂の携帯占いサイト。もしそれを見たら、絶対先に進んではいけないという怪しげな噂……。そんなストーリー紹介だけをみると、「お、韓国の『ボイス』とか、『ザ・アイ』とか、『リング』みたいなホラーかな?」 と思ってしまいがちだが、そんな立派な作品を『チェーン』に期待してはいけない。

では、『チェーン』がどんな映画かといえば、高校時代にクラスのみんなで文化祭のとき作ったホラービデオ、だと思えばだいたい間違いはない。

あまりに行き当たりばったりな、テキトーなストーリーなので、上映時間はたったの76分だ。それなのに、なんだか監督さん、その時間を埋めるのが大変そうである。

想像するに、「あのさ、コムカイを使って今度映画撮るからさ、とりあえず頼むよ。コムカイのスケジュールは1週間しか空きがないからさ、明日から早速撮影だから、よろしく!」と、ある日突然プロデューサーに言われ、やむをえずろくにプロットも決めずに撮り始めたものの、案の定ネタが思い浮かばず、どうしても76分しか埋められなかった……のではないかとさえ思わせる。

また、思わせぶりに画面がゆらゆらゆれているな、と思って良く見ていたら、ただのカメラマンの手ぶれだった。そんな強烈な肩透かしも多数味わえる。

犠牲者が死ぬときに取る奇妙なポーズは、爆笑必至だし、時々挿入されるインタビューのシーンも、時間を埋めたいだけという裏事情がかいま見えるようで、苦笑を禁じえない。

肝心の小向美奈子はビキニすら着ず、あの立派なおムネも封印。これではこの映画、ひとつも良い所がない。こうなると、逆に大笑いできて、別の意味で凄い映画と言える。

いや、1つだけいい点があった。それは、「こんなのでも日本では商業映画になるんだ」ということで、若いクリエーターたちに希望を持たせることができる点である。現代の映画の最低ランクを知るために、撃沈覚悟で見に行くというのも”アリ”である。



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