『セクレタリー』60点(100点満点中)
美人秘書、お尻叩かれ、あらカイカン!
『コンフェッション』『アダプテーション』といった話題作が、この後控えており、日本でもブレイクが期待される女優、マギー・ギレンホールが、マゾに目覚める秘書を演じて、サンダンス映画祭で大きな話題を読んだ映画。サンダンス映画祭と言うのは、ロバート・レッドフォードが主催する、インディペンデント映画を集めた映画祭。個性的な作品を輩出することが多く、若手作家の登竜門としても知られる。
『セクレタリー』を一言でいえば、「美人秘書、お尻叩かれあら快感。マゾに目覚めて人生開花」というような映画である。就職の経験もなく、恋愛もセックスの経験もなく、自傷癖があってうつ気味という、まあいってみればダメ人間を、マギーさんが見事に演じる。
彼女の、尻を叩かれているときの恍惚とした表情は、普通なかなかできるものではあるまい。恐らく彼女はこの一本で、ananの”今年、一番尻を叩きたい女優”に選ばれることになるだろう。(ありません)
だが、別に本作は、エロいバカ映画と言うわけではない。真のテーマは、SMに目覚め、その性癖を認める事によって自我に目覚め、人間として自立して行く女性の成長物語なのだ。
確かに、変態の話ではあるが、考えてみれば誰しも、少しはそうした要素を持っているものである。そのような、自分に潜む部分への比喩としてみれば、この映画で描く奇妙なSM的主従関係も、決して非現実的な話ではないという事がわかるだろう。
また、この映画は、舞台となる職場の内装が非常にシックなおかげで、全体的に下品さを感じさせないところが美点である。アーティスティックな映像は、見ていて決して気分が悪くなることはない。
とはいえ、そんな所を批評家風にもっともらしく取り上げてみても、やはり記憶に残るのは、マギー・ギレンホールの呆けた表情だけなのであるが。