『エデンより彼方に』50点(100点満点中)

見事な美術とレトロな雰囲気を楽しむメロドラマ

アカデミー主要4部門にノミネートされた、古典的メロドラマ。

まだ偏見や差別意識がごく普通に存在していた、1957年のコネチカット州が舞台。キャシー・ウィテカーはいわゆる“理想の主婦”。一流企業の重役に就く夫フランクの妻、そして2児の母として、地域でも一目置かれる存在だった。

ところがある日、残業のフランクのもとへ夕食を持って行った彼女は、夫のある秘密を知ってしまう。それ以来、心が不安定になったキャシーは、優しい黒人の庭師レイモンドと交流を深めていくのだが。

この映画、古典的というところがポイントで、画面の雰囲気の隅々まで、50年代ハリウッド映画を彷彿とさせる雰囲気になっている。ジーンズでいえば、ヴィンテージレプリカというやつだ。

当然、その年代の映画のファン層を大きなターゲットにしており、彼らが見ると「おっ、ここ凝ってるね」とか、「そうそう、この展開だよ」という風に楽しめるわけである。

主演は演技派ジュリアン・ムーア。見事な衣装や美術との相乗効果で、映画のクォリティを上げている。このあたり、さすがの風格だ。

ただ、若者がヴィンテージ・ジーンズの発売された時代を知らないのと同じで、若い人にとってはこの映画、「こんなもんか」で終わる可能性も高い。ストーリーも昔ながらのメロドラマ風。差別に負けずに戦う主人公たちの姿は美しいが、大きな起伏が無いので万人向けとはいいがたい。



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