『バトル・ロワイアルII 鎮魂歌』5点(100点満点中)
年間ワーストクラスの支離滅裂な駄作だが、だからこそ必見
高見広春の、抜群に面白い小説『バトルロワイアル』の世界観を使い、オリジナルストーリーで作ったPART2。前作に引き続いて監督した深作欣二が製作途中で亡くなり、息子さんが監督を引き継いで完成させた。
それにしても深作親子は、原作の面白さを全くわかっていないのではないか。あの小説は、サバイバルの過程を純粋に娯楽として楽しむ小説だと私は思っている。人物の描き分けが上手く、心理描写もリアルで感情移入しやすい。荒唐無稽でショッキングな背景設定ばかりが話題になったが、そんなものは単なるブラックジョークで、作者は確信犯のウケ狙いでやっていたはずだ。
それなのに今回の、『BR2 レクイエム』は、まさにその『どうでもいい』要素であった、「奇抜な設定・世界観」の部分を、妙にふくらませるという、とんちんかんな事をやっている。そして極め付けに、幼稚な反米・反戦思想の色濃い、テーマ性の強い映画にしてしまった。
しかし、もともと”ピュア娯楽小説”であった『バトルロワイヤル』の世界で、マジメに反戦テーマを語るなど、野暮以外の何物でもない。
おかげで、製作側がマジメになるほど、話のリアリティの無さばかりが目立ち、トホホ……となってしまう。これが原作小説のように、確信犯的ピュア娯楽として作ってあるならば、リアリティの無さはまったくマイナスではないが、『バトルロワイヤル2』は政治・思想色の強い戦争映画として作ってある。リアリティの欠如は、作品に込めたメッセージの幼稚さを際立たせるマイナス効果しかない。
ストーリーも史上まれに見る支離滅裂さである。ここでは1つだけ指摘しよう。
まず、前作の生き残りであり、本作では凶悪なテロリストとして政府に追われる七原(藤原竜也)という少年がいる。だが政府は、彼の居場所は半年前から把握しているという設定になっている。彼が潜伏するのは、テロリストだけが住む、離れ小島だそうである。
となれば、「なーるほど、それじゃ、空爆されて七原はおしまいだね」と思うのが普通だろう。これだけニュースで現実の戦争報道をやっていれば、"地上軍投入の前に大規模空爆をする" という現代戦の常識は、いまどきタバコ屋のオバちゃんだって知っている。
ところがこの映画の政府ときたら、何の罪もない中学生大勢と、大事な政府の陸軍の兵士多数を、何の航空支援もなく突入させて大量戦死させるのである。こんな非常識な事をやっておきながら、理由について一切劇中で説明はない。
おそらく、こうして無意味に死んでいく兵士を描く事で、深作親子は、“戦争の残酷さ”を訴えようとしたのだと思うが、やる事が露骨で、おまけに不公平である。これではまるで、軍人や軍隊はバカで、戦争など愚か者のする事と言っているようなものだ。
こうしたストーリーを、マジメに作ってしまうその感性が、私には理解できない。本作は、R-15指定だが、むしろ15歳以上の大人の鑑賞には耐えないのではないか。中学生がたくさん出てくる映画だが、私は、脚本も中学生が書いたのかと思ったくらいだ。
映画版『バトルロワイアル』シリーズは、米国でのセールスが、過激過ぎるという理由で芳しくないそうだ。だが、下手をするとテロリスト賛辞と取られかねない、こんな映画を見られなくてすむのは、むしろ良い事ではないか。反米だろうとなんだろうと、多少でも説得力があれば救いがあるが、まともな教養を持つ大人が見たら、吹き出してしまうこんな幼稚な主張では、あまりにも恥ずかしい。
だがしかし、こんな「バトル・ロワイアルII レクイエム」でも、劇場に出掛けていく価値は大いにある。むしろ、私がここまで書けば、逆に「ホントかどうか見てやろう」という方が出てくるというのが世の常だ。だからその際に役立つよう、私のオススメするこの映画の楽しみ方を書いておこうと思う。
それは、「完全にギャグ作品と割り切って観る」という事。友人や、話のわかる恋人と観にいって、帰りにカフェに寄って、二人で突っ込みをいれて楽しむのが基本だ。
その際、とくに注意して見るべきポイントは、「藤原竜也演じる七原のセリフ全般」と、「登場人物が死ぬときのセリフ全般」(敵軍もこのときは、律儀に銃撃をやめて言い終わるまで待っててくれるのだ)。そして、「観客の誰一人、顔も覚えていないのに、死ぬ時は必ず出てくる“名前と出席番号”」である。このへんが、基本の笑い所である。
『バトルロワイヤル2』は、期待すべき点を間違えて劇場に行くと、観客が腹をたてかねない作品である。だから、あくまで、突っ込み所を探すギャグ映画というつもりで見に行く事が重要だ。その点さえ誤らなければ、これほど話のネタになる映画もそうそうない。さて、あなたはいったい、本作をどう感じるだろうか?