『BORDER LINE ボーダーライン』60点(100点満点中)
大作を見るよりずっと面白い
一般公募による自主製作映画コンクール「ぴあフィルムフェスティバル」で選ばれた監督が、そのプロデュースのもとに長編映画を製作するシステム「PFFスカラシップ」による作品。
高校生の周史は、将来に絶望して不満を募らせていた。宮路は中年なのに、いまだ組の集金係に甘んじているヤクザ。宮路と生き別れた娘はるかは援助交際で警察に補導されてしまった。主婦の美佐は、息子のいじめや夫のリストラに悩まされ、精神的に弱っている。アル中のタクシー運転手、黒崎は今日もビールを飲みながら運転。そして自転車をはねてしまう。その自転車に乗っていたのが周史だった。黒崎は、周史が自宅があるという北海道までタクシーに乗せて送ることにするが……。
低予算だから、大手によるプロ監督の映画のように洗練されたものではないが、邦画の場合、大作に限って客との距離感がつかめていない傾向があるので、下手にそうした作品を見るより、こういう小品のほうが、案外面白かったりする。
実際『BORDER LINE ボーダーライン』には、お金を払って見にいってもいいな、と思えるくらいの面白さがある。上映時間118分は、やや長い印象を受けたが、前半は飽きる事も無く画面に引きこまれる。
後半は、できればもっと緊迫感が欲しい所だ。あるものを主人公が届けられるかどうか、という見せ場があるのだが、ここなどは警察との追跡劇を前面に出せば、もっと観客をハラハラさせる事も出来たと思うのだが。
この映画は、いくつかのドラマを並行に追う構成だが、それらがまとまって行く後半〜終盤になるほど間延びする点と、ご都合主義が目に付いてしまう点がおしい。
音楽・音響には、学生映画のようなチープさを感じるし、人をなぐるシーンも下手と、細部に気になる部分はあるが、それでも、幾人かの役者の存在感ある演技と、こちらを引きこむだけの面白さを持っているストーリーは買いたい。