『ムーンライト・マイル』50点(100点満点中)

挿入曲が好みに合う人にすすめたい

ダスティン・ホフマン、スーザン・サランドン、ホリー・ハンターといった、アカデミー賞の常連俳優が競演する感動ドラマ。

男の子にとっては、彼女や奥さんの父親との関係と言うのは、なかなか微妙でデリケートな人間関係であるが、本作はそこらへんを上手に、リアルに描いてある。ホフマン演じる婚約者の父親は、不器用で、娘の死という現実をいまだに受け止め切れない男だが、さすがにホフマンは上手い。キャスティングをみればわかる通り、『ムーンライトマイル』は、主にこうした俳優陣の演技力を楽しむ映画といえる。

また、タイトルはローリング・ストーンズの同名曲の事であるが、この曲は、アルバムの片隅にひっそりと収録されていたマイナーなもの。映画の舞台は70年代なのだが、決してその時代のヒット曲は使いたくないという、監督の意向をくんだ選曲となっている。監督は、自らサントラのライナーノーツ(解説)まで書いたというほど音楽にはこだわっているので、この点も映画の見所と言えるだろう。

ただ、音楽というのは、いくらこだわったといっても好みがある。たとえば私は、この映画のサントラCDを何度も自宅で聞いてみたが、悪くはないが、それほどよくもない、といった感想を持った。ぶっちゃけた話、肝心のムーンライトマイルという曲がイマイチだと思った。映画の宣伝部によれば、『知られざる名曲』という話であるが、知られざるままでいた方が良かったのではないか、とすら思ったのである。

また、映画自体について言えば、どうにも盛りあがりに欠けるドラマという印象である。原因は、映画全体に漂うコミカル色。これが個人的に気になってしまう。さらに、序盤で物語に引きこまれなかったので、途中で興味を失って、付いて行けずに終わってしまった。

終盤では、涙を誘うシーンもあるが、結論としては、それほど強くオススメしたいと思える映画じゃないといったところだ。



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