『パイラン』40点(100点満点中)

泣こうという心構えを持っていくべき恋愛映画

浅田次郎の短編を原作にした、韓国製恋愛ドラマ。主演は、『シュリ』の悪役が記憶に残るチェ・ミンシク。

四十過ぎて独りふらふらと暮らすカンジェは、ある日突然「奥さんが亡くなった」と知らされる。身に覚えがなかったが、かつて小金欲しさに中国人女性と偽装結婚したことを想い出す。女の名は「白蘭(パイラン)」。一度も会うことのなかった“妻”の遺体を引き取りに、彼はパイランが暮らしていた町を訪れる。部屋に小さく“夫”の写真を飾り、病と闘いながら必至に働き言葉を覚えていったパイランの最後の手紙。そこにはカンジェへの純な気持ちが切々と綴られていた。

上映時間は116分だが、少々長い。このボリュームの話なら、あと20分くらい縮めることは出来たるではないか。うすめたコーヒーみたいな印象の映画である。

チェ・ミンシクは、相変わらずの存在感で、今回はオーバーアクト気味の熱演を見せる。ラスト近くにある、観客の涙を誘う演技が見事だ。ただ、このストーリーから言ったら、相手役の女が少々美人過ぎやしないかとも思う。あんな、誰もが振りかえるような美女では、いくら地味メークしてもその美貌を隠せない。べつにブスを使えというわけではないが、もうちょい平凡な顔立ちの女優さんを使った方が嫌味がなかった。

ラストは、大げさなまでに叙情的な、まさに韓国映画といった感じ。まあ、これが味というものであろう。そんなわけで、中年の男と超美人の、切ないラブストーリーを見て泣きたいという方がいたらぜひどうぞ。



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