『ニューヨーク最後の日々』40点(100点満点中)
役者の演技は凄いが……
ロバート・レッドフォードが製作(出演はしていない)、オスカー俳優競演のヒューマン・ドラマ。
アル・パチーノが、業界の汚れた部分に耐え切れず、引退を考えている初老のパブリシストを演じる。パブリシスト(宣伝マン)といいつつ、ようは有名人や政治家のケツ持ちで、スキャンダルの揉み消しなどの、汚れ仕事まで担当する。
この映画のアル・パチーノは、病人のような疲れきった男の役というより、もはや病人そのものである。1度寝たら、2度と置きあがらないだろうという、寿命1日前みたいな顔をしている。まったく、バケモノみたいな演技力である。
相手役は、新作『8マイル』で、エミネム君のオカアチャンを演じたキム・ベイシンガーで、彼女はとっても可愛らしい。……と思って生年見たら、なんともう50代だった。うーむ……。
パチーノ氏が、どうしようもなく汚れた、業界人ばかりのパーティー会場で、人生に疲れ切って死にそうな気持ちになったその時、人ごみに彼女の姿を見付けるシーンがある。この時のキムさんの笑顔を見た観客は、パチーノ氏と共に、心から癒された気持ちになるはずだ。まさに、はきだめに鶴である。そんなキャラを、50代になっても演じられる女優というのはまれであろう。
ストーリーは地味だし、特に感動的な部分もなく、逆に退屈な場面もあるくらいだが、この2人の演技力だけは心に残る映画である。