『神に選ばれし無敵の男』60点(100点満点中)
本物のストロンゲストマンのパワーにビックリ!
ナチス時代に実在した、二人の『無敵の男』ことハヌッセンとジシェ。彼らの波乱の人生を、実話をもとに描く、人間ドラマである。
ユダヤ人にとって、歴史的な人物、英雄として記憶されるこの名前も、我々日本人にとっては、あまりなじみはない。だから、この映画を見ても多くの人は、ぴんとこないだろう。
そんなわけで、ごく一部の客層を対象にした、しみじみと味わう地味なドラマである。
監督さんは、CGなどの特殊効果ではなく、本物にこだわった。
例えばピアニスト役の女性も、俳優ではなく、本物の世界的なピアニストのアンナ・ゴウリが演じている。だから、この映画における重要な場面である、ピアノ演奏シーンは、吹き替えなしの本物の演奏である。
また、主人公である怪力王ジシェを演じるのは、本物のワールド・ストロンゲストマン・コンテストのチャンピオン、ヨウコ・アホラであり、こちらも俳優ではない。
ストロンゲストマン・コンテストというのは、ヨーロッパで人気のスポーツで、日本人でも、私のようなマッチョ志向の人間ならば、誰でも知っている「世界一強い男」を決める競技である。
競技の一例を言えば、片手250キロの鉄の塊を両手に一つずつ持って、30メートル走る、といったものである。控えめにいって、TV番組『筋肉番付』のチャンピオンが、予選大会でダントツ最下位になりそうなレベルのバケモノたちが、人間離れした活躍を見せるスポーツ、といえば分かりやすいか。予選では、骨折や靭帯の切断などに見まわれる選手が続出するという、見ているだけで恐ろしい競技である。
そんな競技のもとチャンピオンであるヨウコ・アホラがまさか、映画のスクリーンで見れるとは私も思ってもおらず、試写室で見たときは、本当にぶっ飛んだ。彼が映画の中で見せる怪力技の数々は、案の定すごい。
たとえば、ビールが満杯に入った樽を、部屋の端から壁まで片手でぶん投げるなんてのは、一般人でも凄さが実感できるのでは無いだろうか。こうした事をやらせたら、ストロンゲストマンは本当に強い。この怪力には、あのボブ・サップでもかなうまい。
そんなヨウコのパワーを見ているだけで、私は楽しくて、さらに彼が上半身裸になるシーンでは、「おいおい、そんなスゲー身体した奴が、あの時代にいるわけねーよ」と、苦笑しながら驚愕したものである。
それ以外は、普通の伝記映画といった感じで、私的にはあまり見るところは無かった。題材からして一般向けで無いというのは、やむを得ない所だ。60点は、ヨウコのパワー・アトラクションに差し上げたい。