『風の絨毯』40点(100点満点中)

イランの写真集みたいなもの

イランと日本の合作映画。ペルシャ絨毯作りを通して、ちょびっと恋なんかが始まる予感の、日本の少女とイランの少年の物語。

手持ちカメラによるドキュメント風映像で、イラン人の日常や文化を、ディテールにこだわって描く。ストーリーで楽しませるというよりは、あまり私たちが触れることのない中東の世界を「感じる」ための作品といえる。イラン人たちの日常プロモーションビデオ的な面白さを期待するといい。

世界的な文化至宝であるペルシャ絨毯の作り方や、歴史が長く誇り高いイランの人々が普段どんな暮らしをしているかを知ることは、十分な知的興奮を与えてくれる。ただ、もともと興味のない人をひきつけるほど、強い吸引力があるわけではない。

音楽はほとんど使われず、ラストも驚くほどあっさりしている。シンプルで、さらりと過ぎ去る風のような映画だ。ペルシャ絨毯などの文化財輸出制限とか、お祈りの様子、文化財輸出に関わる商人の様子など、そういうことに興味がある人はぜひどうぞ。



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