『TAXi3 タクシー3』60点(100点満点中)

ただのタクシーがこんなにカッコイイ映画はほかにない

フランスでの『TAXI』シリーズは、国民的な大人気映画らしく、プレミア試写にはとんでもない数の人が集まったと聞く。

シリーズ第3弾である本作は、これまで同様、くだらないギャグと超一流のカーアクションのカップリングという、独特の個性を持つフランス映画だ。

毎作、非常識さがエスカレートするこのシリーズ、今回は、タクシーがキャタピラを出して雪山を爆走するという、おバカ度満点の展開が売りとなる。

私は、THX認定劇場である五反田のイマジカ試写室で観たのだが、この作品はホントに凄い音響であった。冒頭のドドーンという音が無音の試写室に轟いたときは、10センチほど飛び上がったくらいだ。皆さんも、鑑賞するなら音にはなるべくこだわっていただきたい。

『タクシー3』には、見せ場が大きく分けて3つあるが、最初の一つ目はとくに必見なので、そこを決して見逃さないよう。上映から5分遅れたら、もうあなたは、この映画の魅力の80%を見逃したことになるので、次の回を見たほうがいい。

『Taxi』シリーズらしく、007シリーズのパロディなど、ギャグのセンスのうすら寒さもいつも通りであるが、車をカッコ良く見せる演出は、当代随一といっていい。カット割りも構図も、どれもいい。この映画の白いプジョーのカッコ良さに匹敵するのは、『ナイトライダー』の黒いトランザムくらいのものだ。

主題曲の『ミザルー』も、もっとも盛りあがる冒頭のアクションシーンで使われる。この曲が、超カッコイイこのカーチェイスシーンに流れるだけで、観客にはゾクゾクするほどの興奮が湧き上がる。私は、このシークエンスだけで1800円を払う価値があると思う。

ただ笑えるのは、1番素敵なこのシーンが、本編に全く関係のない、見せ場のための見せ場という点である。最大の売りであるはずの雪上走行は、なにやら白い所を白い車がノロノロ走っているとしか見えない所が泣けてくる。

やはり、タクシーシリーズはハイスピードのカーアクションこそが最大の見せ場だ。次回は、その辺を更に極めて欲しいと思う。なお、このPART3は1話完結型のストーリーなので、前作の鑑賞はことさら必要ではない。

今後おそらく作られる、『タクシー4』でも、我らがプジョータクシーはエスカレートして、とんでもなくイカれたアクションを見せてくれるだろう。私の予想では、水上走行くらいはかならず出てくると信じているのだが、さてどうなるか。



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